奈良県市町村総合事務組合(管理者、小城利重・斑鳩町長)が退職手当基金の運用目的で保有していた仕組債を満期前に売却し、元本割れにより20億円が消失した問題で、債券ごとの売却額など運用の詳細が、関係者への取材で分かった。複数の債券で、売却額が元本の半分前後になったほか、保有中に利息の金利がゼロになる時期があった。
組合が2009年度末の時点で保有していた仕組債は16銘柄68億100万円分。満期は30年が13銘柄、20年が3銘柄。いずれも円建て外債で、長短の金利差や円相場に連動して利息の金利が変動する。
全16銘柄のうち、13銘柄55億100万円分を10、11年度に売却した。残る3銘柄13億円分は、2銘柄8億円分が元本が保持される早期償還になり、1銘柄5億円分は保有を継続した。
売却した債券はいずれも元本を割り、元本の総額55億100万円に対する売却額の総額は34億3510万円。対元本割合は62.4%で、差損は20億6590万円に上った。債券ごとの対元本割合の最も低いものは、半分以下の44.25%だった。利息が総額で5億5717万円あったが、これを加味しても、元本に対して15億873万円の減少となった。
一方、利息の金利では、16銘柄のうち10銘柄で金利が下限のゼロになる時期があった。うち8銘柄は金利ゼロの時期が3年を最高に2年以上続いた。
県市町村総合事務組合は、県内の29市町村、21一部事務組合職員の退職手当支給事務を共同で処理するための一部事務組合。退職手当の財源は、各市町村、各組合が毎年支出する負担金。退職手当基金は、財源が不足したときに備えるため、負担金収入の余った分を積み立てていた。しかし、近年は支給が負担金収入を上回り、退職手当の財源が不足、基金を取り崩し続け、仕組債も満期前に売却せざるを得なくなった。