奈良県庁コンビニの閉庁日営業、調整区域で都市計画法抵触の恐れ 職員の福利厚生で開設も観光客中心
喫茶の機能を備えた奈良県庁のコンビニ。日曜の午後、観光客らでにぎわう=2014年11月23日、奈良市登大路町
奈良県がことし3月、奈良市の奈良公園観光の拠点づくりの一環で同市登大路町の県庁内に開設したコンビニエンスストアに対し、市が都市計画法に抵触する恐れがあると指摘していることが分かった。
県庁がある地域は市街化調整区域に指定されているため、通常、コンビニの開設には市の開発許可が必要となるが、県が職員の福利厚生のための県庁施設と説明したため、市は当初、規制の対象外として扱かっていた。しかし、土・日曜などの閉庁日には観光客など職員以外の利用が圧倒的に多く、そうした実態を見過ごせなくなった。
コンビニがあるのは県庁東棟の1階。広さ約270平方メートルで、軽飲食ができる喫茶の機能も備えている。年中無休で営業時間は午前7時~午後10時(喫茶は午後7時まで)。酒や奈良土産も置いている。国道369号の通りから直接出入りできる。コンビニ大手のセブン-イレブンが出店している。
県庁は奈良公園の入り口に当たる所にあり、県の2012年策定の奈良公園基本戦略は、県庁周辺について周遊環境の向上を図る場と位置付けた。県庁東棟を観光交流の拠点として整備しており、13年、カフェ機能を持つコンビニの出店者を公募した。公募要領は目的について「民間事業者のノウハウを生かした観光交流拠点づくりを行い、来訪者の利便性(職員の福利厚生を含む)の向上を図りたい」と説明していた。
開設に当たっては都市計画法上の扱いが課題だった。市街化調整区域では開発行為が規制されている。コンビニは日常生活に必要な物品の販売店舗として認められているほか、自動車運転者の休憩所機能を備えた国道など沿道のコンビニも認められているが、いずれもいくつかの審査基準を満たさなければならない。
審査基準は、県が定めた「開発許可制度等に関する審査基準」に準じている。県庁の場合、日常生活の物品販売であれば、市街化区域から500メートル以上離れているかどうかなどが課題になるとみられる。運転者の休憩所機能を備えたコンビニであれば、駐車場を設置しているかどうかなどが課題になるとみられる。
県は許可権限を持つ市と協議。市開発指導課によると、県はそれまで県庁地階にあった職員の福利厚生施設の売店を閉鎖して移すもので、閉庁日の営業については県庁の一角にある県警本部の職員や行事で休日出勤した職員の利用があると説明。市も了解した。
これに対し、11月6日の市議会建設企業委員会で井上昌弘委員長(共産)が「なぜ閉庁日も営業するのか。奈良公園の観光客への利便提供が主であり、一般のコンビニとして立地審査を行うべき。開発行為を指導監督する立場にある県、市の姿勢が問われる」などと指摘。市も「都市計画法に抵触する恐れがある」と答弁した。
奈良市役所にも職員互助会が委託したコンビニが出店している。営業時間は午前8時~午後6時半。商業地域のため規制はないが、閉庁日は休業している。京都市にある京都府庁も府庁生協が運営する売店がある。府によると、府警本部があり、行事などで休日出勤する職員もいるが、閉庁日は休業しているという。
11月23日日曜日の午後、県庁前は観光客の人並みが絶えず、コンビニは頻繁に客が出入りしていた。弁当やパンの棚はほとんど空だった。喫茶席では大勢の人が休憩を取っていた。
市は県に協議を申し入れている。中原達雄・市開発指導課長は「休日は職員以外の利用が圧倒的に多いと見受けられる。福利厚生施設として設けられたが、利用形態は一般のコンビニと変わらないのではないか。状態が変わってきたので、法に抵触すると認められる場合は必要な手続きを取ってもらいたい」としている。
篠田隆三・県奈良公園室長補佐は「あくまで職員の福利厚生のためにつくった。福利厚生施設の明確な定義はない。週末は職員と一般の利用の割合は変わるが、奈良公園での行事や災害、残業などで休日を含む時間外勤務の実態があり、職員からは飲み物や食べ物があるのはありがたいと喜ばれている」としている。