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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

生駒北スポーツセンターのグラウンド夜間照明、市が本格実施 地元自治会「強行」と反発

夜間照明(右)が点灯された日没直後の生駒北スポーツセンターのグラウンド。奥は照明の光を受ける住宅

夜間照明(右)が点灯された日没直後の生駒北スポーツセンターのグラウンド。奥は照明の光を受ける住宅=2015年9月5日、生駒市高山町

 生駒市が企業の福利厚生施設だった体育施設を買い取って、ことし3月に開業した同市高山町のHOS(ホス)生駒北スポーツセンターのグラウンドの夜間照明が今月から本格実施されている。市はこれまで、地元の自治会が光の害を訴えていたことから、実施を見送っていた。自治会は納得しておらず、「強行だ」と反発している。

 施設は、住宅地「獅子ケ丘ハイマート」(約150世帯)の奥の一角に立地。このため、住民は開業前から住環境への影響を心配してきた。施設の利用者は、社員などに限られていたときと違って大幅増が見込まれ、それに伴い交通量も増えることが予想されたため。獅子ケ丘自治会は市に対し、2014年10月、市と自治会が合意に至るまで整備工事を実施しないよう求める署名を提出した。

 グラウンドはサッカーやラグビー、少年野球などに使える。利用時間は、企業の福利厚生施設だった時代には午前9時~午後6時だったが、市施設への転換で午前9時~午後9時に拡大された。これに伴い、夜間照明設備が整えられた。市は7月末から8月末にかけ試験運用を行っていた。

 自治会は利用時間を午後6時までとするよう求めており、夜間照明に対しては光の害を訴えてきた。照明装置は強い光でグラウンドを照らしており、道一本を挟んでグラウンドと向き合う住宅にも光が及ぶ。自治会によると、市なども立ち会った試験点灯の際、窓から光が差し込む住宅が少なくとも5軒は確認されたという。車の運転者がまぶしさで目がくらみ、事故を起こす危険性もあるとする。

 また、夜間のグラウンド利用については、周辺に響き渡る選手らの掛け声や号令で安息を得られないと訴える住民もいるという。

 市によると、7月、住宅への光の影響を緩和するため、照明装置の照射の向きを下にする調整を実施した。しかし、グラウンドの利用に必要な明るさを確保できないことが分かり、元の状態に戻した。一方、ことし12月から来年3月にかけて、グラウンドと住宅地の境界の一部に光の緩衝樹となる高木を植栽する計画という。

 市は、グラウンドの明るさはレクリエーションや練習程度の水準の100ルクスで、JIS照度基準の3段階では一番下となり、環境には配慮しているとする。利用時間については、他にも午後9時まで利用できる市の体育施設があり、均衡を考えたとする。

 同スポーツセンターの運営をめぐっては、市が6月の市議会定例会に、施設の改修や不要施設の撤去に充てる補正予算を提案した際、市議会が可決に当たって特別に付帯決議をしている。決議は、予算執行に際して「地元住民の意向を無視して強引に事業を進めない」「生活環境の保全に十分に配慮した措置を講じる」の2点を強く求めると注文を付けた。

 自治会は今月2日、市に対し、夜間照明の実施に抗議する申し入れ書を提出、反発を強めている。同自治会スポーツ施設問題検討委員会の森本広史委員長は「住民と話し合って進めるならいいが、市は最初から突っ走っている。話し合いで市の譲歩はない。市は一方的な通告ばかり。市民が参加して施設の生かし方を決めるべきだ」と話している。

 市スポーツ振興課の杉浦弘和課長は「議会の付帯決議は重く受け止めているが、照明に理解いただくところまでいっていない。一方で、公費で整備したものを利用しないと、市民全体への説明責任を果たせない。地域団体である自治会とのつながりは大切。できるもの、できないものもあるが、できる限り話し合い、合意を見いだしていきたい」としている。【続報へ】

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