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地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良市・浅野善一
ジャーナリスト浅野詠子

関西広域)昨年台風21号、紀の川市の浸水で国、和歌山県、市が初会合へ 大滝ダム完成後に想定外の内水氾濫

 昨年10月の台風21号の豪雨により、和歌山県紀の川市丸栖地区など紀の川支流の貴志川流域で家屋70棟が浸水した被害を受け、国土交通省近畿地方整備局(大阪市中央区大手前1丁目)は26日、和歌山県、紀の川市の各河川担当者らと今後の対策などを協議する初の会合を開く。上流の奈良県川上村に大滝ダムが完成して5年。流域では、想定外の内水氾濫や支流の堆砂など、巨大ダム重視の予算措置では解決が困難な課題が浮き彫りになっている。

 紀の川源流に当たる大台ケ原観測所が示した台風21号の時間最大雨量は52ミリ。貴志川流域では約40ヘクタールが浸水し、床上浸水35棟、床下浸水35棟の被害に見舞われた。紀の川市によると、主な浸水原因として、用水路などによる内水氾濫があり、貴志川が逆流する事態を防ごうと水路を閉門したことが被害を拡大したとみている。加えて、市危機管理課の担当者は「近年の貴志川は堆砂が深刻であり、浸水の被害を防ぐために取り除く工事が急がれる」と話す。

 支流の貴志川が本流の紀の川と合流するまでの6キロは、国の直轄管理区間となり、上流は和歌山県が管理する。2011年の紀伊半島大水害(台風12号)では、貴志川流域は8棟の家屋が全壊して流出、半壊した家屋は20棟、床上浸水の被害は57棟に上った。対策として県は、河道を掘削し流下能力を向上させるなどの課題を掲げている。 

 貴志川流域は古くは1953年の南紀豪雨、59年の伊勢湾台風でも深刻な被害を受けた。伊勢湾台風を契機に国は治水を主目的とした大滝ダムを計画し、半世紀の歳月と3640億円の公費をかけ2013年に完成させた。同ダム本体のコンクリート打設が始まる前、旧建設省大滝ダム工事事務所(奈良県吉野町河原屋、当時)は「伊勢湾台風がまたやってきたとしても約74万人が洪水から免れるようにするため建設する」とPR用文書で説明している。

 繰り返される貴志川流域の浸水被害は、巨大ダムの築造を優先していては防ぎにくい河川整備の課題を浮き彫りにする。また昨年の台風21号で住民1人が死亡した紀の川市西脇地区の斜面崩落を巡っては、県施工の農道盛り土の排水を疑問視した県設置調査委員会コメントが年末に発表されたばかり。台風被害の背景は風雨の強さだけ見ていても分からず、複雑だ。さかのぼれば、戦時中に行われた木材の強制伐採および未植林地の地滑りが1953年の台風13号の被害を拡大したとする分析が川上村発行の「大迫ダム誌」にある。

 大滝ダムが完成した半年後には、台風18号による大雨で、下流の奈良県五條市川端地区や市内の上野公園の一部が浸水したことを県議の秋本登志嗣さん(自民党奈良)が定例会で取り上げている。紀伊半島大水害により堆積した土砂で河床が上昇した地点があり、また支流の丹生川からの流入量が想定外だったことが一因とみられている。

 近畿地方整備局によると、昨年の台風21号による被害発生後、関係自治体との連絡は取っているが、県、市と共に行う正式な会号は今回が初めて。同局河川計画課は「会議は非公開で行う」と話している。【関連記事へ】

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