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地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良市・浅野善一
ジャーナリスト浅野詠子

関西広域)ゴジラ造形者利光貞三が文字デザインの緞帳、戦禍逃れ現存 12月1日、大阪・吹田市での人形劇公演で展示

「大阪人形座」の緞帳を手にする山下恵子さん=大阪府高槻市寿町2丁目の山下さん宅

「大阪人形座」の緞帳を手にする山下恵子さん=大阪府高槻市寿町2丁目の山下さん宅

阪本一房生誕100年記念公演のちらし

阪本一房生誕100年記念公演のちらし

 大阪市天王寺区で1935年、旗上げした新興の人形劇団、「大阪人形座」の緞帳(どんちょう)が戦禍を逃れ、現存していることが分かった。文字デザインは、東宝映画「ゴジラ」の怪獣を造形した利光貞三(1909~82年)が手掛けている。12月1日、大阪府吹田市泉町2丁目の市文化会館メイシアターで開かれる「人形芝居出口座 阪本一房生誕100年記念公演」(市文化振興事業団主催)に合わせ、同館ロビーで展示される。

人形芝居出口座 阪本一房生誕100年記念公演

 生誕100年を迎えた阪本一房は、大阪人形座の精神を受け継ぎ、同市出口町に人形芝居専門の小劇場「出口座」(1975~2000年)を創設し、地元の民話などを題材にした脚本をはじめ、糸あやつりの人形制作、人形遣い、舞台装置作りをこなした。同時に、昭和初年に関西で誕生した3つの新興人形劇団の歴史を掘り起こし、「大阪人形座の記録」を刊行している。利光は大阪人形座の座員だった。

 阪本の記録によると、「大阪人形座」の事務所は大阪市天王寺区大道4丁目にあった。音楽家の小代義雄や彫刻家の浅野孟府ら、一線の美術家たちによる設立は話題を呼んだという。同劇団は、小山内薫原作のファンタジー「三つの願い」などを子ども会や小学校で、新聞社の主催により上演した。しかし戦時下の国家総動員体制に容認されず、1939年、官憲から解散命令を受けた。

 公開される緞帳は、縦2メートル、横5メートル。ビロードの生地は三越劇場が寄贈し、人形の図案は小代、利光は「MARIONETTE THEATER」の文字をデザインしたと伝えられている。燃えるような真紅の生地だったという。80余年を経て、色合いは後退したが、刺しゅうで描かれた絵柄や文字はくっきり鮮やかで、モダンな雰囲気を発している。戦後、小代から阪本に手渡され、80年代まで「出口座」の壁面に飾られていた。

 阪本の没後、緞帳は吹田市内の生家の衣装ケースの中に保管されていたが、今年5月、遺族から、元出口座の人形遣い、大阪府高槻市寿町2丁目の山下恵子さん(64)に寄贈の申し出があった。山下さんは来年、自宅で守ってきた阪本制作の人形67体と共に緞帳を関西大学の東西学術研究所に贈る。

 記念公演は午前11時と午後2時の2回。「出口座」ゆかりの演目を山下さんらが再演し、上方落語を題材にした「江戸荒物」や旧吹田村の昔話「血の池」を上演する。ゲストの江戸糸あやつり人形師、上條充さんによる「かっぽれ」の上演もある。人形遣い、福田久美子さんも舞台を盛り上げ、人形劇トロッコ主宰の潟見英明さん(私設「人形の図書館」館長)と山下さんのトークもある。入場料は高校生以上1800円、3歳から中学生まで500円。

 山下さんは「いろいろな方々とのご縁が重なって生誕百年の企画が実現します。阪本はこの緞帳を命より大事にしていた。人形劇は総合芸術であり、操り手は人形という役者の演出家であると言って打ち込んだ。記念公演を迎え、感無量です」と話している。

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