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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

奈良県営住宅の女性、離婚機に退去迫られる 連帯保証人見つけられず

 奈良市内の県営住宅に住む女性(59)が離婚を機に退去を迫られている。離婚後は、夫が県営住宅を出て、女性が引き続き居住することにしていた。しかし、入居の名義人が夫となっていたため、入居承継の手続きが必要で、県からあらためて連帯保証人を定めるよう求められたが、女性は連帯保証人を依頼できるような頼れる親族などがいなかった。

 県営住宅は、県が住宅に困窮する低所得者に対して低廉な家賃で入居させるため設置する住宅。

 女性によると、女性は2015年1月、夫とともに県営住宅に入居したが、17年6月に離婚。夫は女性に対し、「俺が出ていく。お前が住めばいい」と告げて、自身の荷物を持って県営住宅を退去した。女性は担当の県住まいまちづくり課に対し、引き続き居住したい旨を伝えた。

 県営住宅条例は、入居者が死亡または退去した場合、同居していた者は知事の承認を受けて引き続き居住することができると定めている。同課は女性に対し、あらためて連帯保証人を定めるよう求めた。連帯保証人は、家賃の滞納などがあったときに連帯して債務を負担する。

 女性には頼れる親族などがいなかった。妹や亡くなったおじの妻がいるが疎遠になるなどしていて、連帯保証人を依頼できる関係ではなくなっていた。県に入居承継承認申請書を提出できないまま時間が経過し、18年9月、連帯保証人がないまま申請書を提出したものの不受理だった。県は19年1月31日、女性を相手取り、住居の明け渡しなどを求める訴えを奈良地裁に起こした。

 連帯保証人について条例は、新規の入居決定者に対しては、連帯保証人を定めて、その者と連署した誓約書を提出するよう求めているが、承継者に対しては18年3月の条例改正で義務化された。女性が承継を希望した当時はまだ規定がなく、県住まいまちづくり課によると、承継を希望する同居人には運用として連帯保証人を求めていた。

 この条例改正では、連帯保証人の扱いについて緩和も行われた。「特別の事情があると認める場合は、連帯保証人を定めないことおよび誓約書に連帯保証人の連署を必要としないこととすることができる」との規定が追加された。

 同課は緩和の狙いについて「高齢者の入居者が増えてきた。高齢者の場合、保証人を依頼できるような親族がいないこともある」と説明した。しかし、明け渡しを求めている女性については、取材に対し「特別の事情に当たらない」と答えた。

 女性は、夫と同居中から生活保護を利用している。月額2万700円の家賃については、この間、県との間で賃貸契約が成立しておらず納付できないため、同額を奈良地方法務局に供託している。

 女性は県と争う構えだ。3月8日、奈良地裁で第1回口頭弁論があった。女性側は「公営住宅法は、住宅に困窮する低額所得者の健康で文化的な生活の住居面での保護を目的としており、法の趣旨は同居人にも及ぶべき。県は女性に対し、適正な助言をして適正な手続きを促すべきだった」などと主張。訴訟代理人の吉田恒俊弁護士は取材に対し、「承継を承認しなかったのは人権問題だ」と述べた。

 一方、女性は「生活の基盤ができるまでここに住みたい」と話した。

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