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地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

記者余話)議会傍聴時に議案を貸し出してくれるよう交渉してみた

 2月28日から3月11日まで奈良県広陵町議会で開かれた定例会の本会議や委員会を傍聴したときのこと。町当局と議員のやりとりを理解するには、議案が手元にあった方が良い。傍聴している間、貸し出してくれるよう、町と交渉してみた。町は応じてくれた。言ってみるものだ。

 会議当日、本会議でも委員会でも、傍聴者向けに議場入り口に置いてあったのは、審議する議案の名称を羅列しただけの議事次第のみ。この時期の地方自治体の議会定例会の審議の中心は新年度予算。分厚い予算案が議会に提出されている。

 3月2日の本会議一般質問、議員が「予算案21ページの地方交付税22億8000万円ー」と質問を始めた。予算案が手元にないと確かめられない。町財政調整基金条例の改正や町空き家適正管理条例の制定なども審議されたが、改正案や条例案の文面がないと、中身を確かめられない。

 記者は、議案貸し出しの希望を町議会事務局に伝え、事務局の指示で、財政などを担当する総務課と交渉した。カウンター近くの職員に伝えると、職員は上司らしき人物に相談。数分後、その場で予算案、補正予算案、提出議案の詳細の3冊を借りることができた。

 広陵町の対応は素早く柔軟で、その必要性を理解してくれた。しかし、以前、大和高田市など8市町のし尿処理などを行っている特別地方公共団体の県葛城地区清掃事務組合の議会定例会を傍聴したときは、こうすんなりとはいかなかった。

 記者は組合に対し、議会に提出される情報公開条例案の写しの提供か閲覧を申し入れた。組合は、定例会は公開で行われ、傍聴が可能として、難色を示した。議案が手元になければ、どのような内容の議案が審議されているのか理解するのは困難。記者は、地方自治法が定める議会の会議公開の原則に照らして、実質が伴わないと反論した。組合は開会当日、傍聴者に議案を貸し出した。

 その市町村を担当する新聞、放送の記者が加盟する記者クラブの記者には、議案が提供されることもある。しかし、そこに属さない取材者や住民は、議場入り口に置いてある議事次第が、その場で閲覧を認められる情報のすべてだと、思ってしまいかねない。

 奈良県内では、少なくとも奈良市、橿原市、五條市などが傍聴者に対し、議案の貸し出しをあらかじめ案内している。また、奈良県や奈良市などは議会開会前に議案をホームページで公開している。

 こうした対応がまだの市町村の議会を傍聴される方には、記者のこのたびの経験を踏まえて、議案の貸し出し交渉をお薦めしたい。

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