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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

視点)入札参加1社 奈良県域水道一体化に向けた工事の一部で 競争性に課題

奈良県御所浄水場=2022年5月、御所市戸毛

奈良県御所浄水場=2022年5月、御所市戸毛

 奈良県域水道一体化構想の受け皿になる県営浄水場と市町村の水道施設を直結する2017~21年度の県工事総額約43億円5000万円(「奈良の声」既報)のうち、記者は任意の13件(計10億円分)について一般競争入札の記録を調べてみた。

 13件のうち4件は、入札に参加する業者が1社しかない「1者応札」で、競争性の乏しい傾向が見られた。

 この4件うち2018年2月、桜井市内で行われた受水地電気工事は予定価格の99.9%にあたる約7400万円で落札されていた。

 契約を担当する県水道局総務課はこれまで、庁舎の入札室などで行われる入札については、参加業者が1社しかない場合、その1社が高値の札を入れる傾向があると見ていた。これに対し、水道広域化に向けたこれら工事群は電子入札を採用し、開札されるまで入札参加者の数は外部に分からないため、たとえ1社の応札でも高値落札を抑止できるはずという見方を同課は示す。

 一方、これら広域化関連工事のうち本年2月、宇陀市内で行われた管路開削等工事の入札は当初、県内12社が入札参加を申請したが7社が辞退し、残る5社のうち4社が、事前公表されている最低制限価格を一斉に入れたため、総合評価落札方式により4社のうちの宇陀市内の業者が約1億2600万円で落札した。

 入札前に予定価格を公表する都道府県は福岡と奈良の2県にとどまる。奈良県土マネジメント部建設業・契約管理課によると、2007年から08年にかけ、県宇陀土木事務所管内で職員が予定価格を漏らす不祥事が発覚し、以来、再発防止のため、事前公表にしている。

 奈良、橿原、生駒の3市でも土木・建築工事の予定価格、最低制限価格を事前に公表している。

 見直す動きがある。近隣の三重県伊賀市によると、入札契約適正化法に基づく国土交通省の指針は、事前公表が競争を阻害し、談合の可能性も指摘していることなどから、同市は2020年から一部工事で予定価格の事後公表を試行するようになった。

 「1者応札」は全国的に珍しくないが、茨城県は2010年から、競争の確保を目的として、入札参加者が1社のみの場合、入札を取りやめていた。一方、事業の進捗(しんちょく)などに影響があるとして昨年から、「1者応札」を有効とする範囲を広げた。また大阪府堺市は、不誠実な入札辞退が続くような場合は、入札参加停止を行うことがあるとする。

 水道工事をはじめどの種の公共事業も赤字で請け負わせることの道理はない。しかし、県の一体化料金試算では、30年先まで市町村が単独で経営するより有利とする明るい見通しが示されている。県の音頭で誕生する広域化の企業団(一部事務組合、2025年度事業開始予定)においては、入札における競争の確保が課題となろう。

 県水道局県域水道一体化準備室は「一体化を推進する構想段階であり、契約などの実務のあり方はまだ検討していない」と話す。 関連記事へ

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