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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

奈良県域水道一体化 知事「奈良市不参加の料金試算を行う」

水道水源開拓の歩みをパネル展示する奈良市企業局=2022年3月

水道水源開拓の歩みをパネル展示する奈良市企業局=2022年3月

 荒井正吾知事は24日の定例記者会見で、県域水道一体化構想に奈良市が不参加になった場合の料金試算を行う考えがあることを明らかにした。水道広域化構想のうち給水人口が3割を占める奈良市の参加・不参加への最終判断が注目される中での発言。荒井知事は「奈良市が不参加でもかろうじてやっていけるような計算がある」とも発言した。

 県水道局県域水道一体化準備室は29日、「奈良の声」の取材に対し「かろうじてやっていける計算というのは、知事が頭の中で計算されたことだと思う。一体化を推進する事務局ではまだそうした計算に着手していない。奈良市が不参加の判断を決めた場合は、事務局として新たな料金試算を行うことになる」と話す。

 定例会見の中で荒井知事は、奈良市が参加すれば、国と県の補助金をより有利に使うことになるので、施設を更新する上でも料金面でも「市は参加した方が得だ」と強調した。

急な事業統合、県内の思いさまざま

 県が当初打ち上げた緩やかな広域化である経営統合は2020年8月に一転、統合当初からの事業統合の方針に変わり、県は統一料金の企業団(一部事務組合)発足を2025年度に目指す。厚生労働省が例示する全国の広域化の取り組みと比較すると、奈良県は検討のペースが早い。

 仮に奈良市が一体化に参加しないことを決めると、広域化の企業団を構成する市町村のうち橿原市が最大の給水人口となる。

 同市は県営水道の最大の消費地で、年間1334万立方メートルを御所市の県営浄水場から受水する。同市が県営水道100%の転換に向けた検討を開始したのは、2013年のこと。県が一体化構想を表明したときより4年ほど早い時期に当たる。

 同市では、地下水の市営八木浄水場が稼働していたが、自己水は全体の2割にまで低下。自前の浄水場を廃止しても、県営御所浄水場との距離が近いため、防災面の不安をカバーできると県水全面転換に踏み切った。近年には約10億円を投じて同市一町に受水地を建設するなど独自の努力もしてきた。

 県と27市町村による水道一体化の協議において、橿原市は推進役として知られる。一方、市の水道担当者は「県水100%に転換した時期(2016年)が比較的早かった分、これから浄水場を廃止する市町村と比べると、一体化に伴う特段の料金メリットが橿原市にあるとは思えない」との見方を示す。

 同市東坊城町から西へ1キロ先に近接する葛城市では今年5月、全区長を対象に県域水道一体化構想の説明会を開いている。6月の市議会・県域水道一体化調査特別委員会では、一体化の協議が奈良市を中心に参加、不参加の綱引きばかりが顕著ではないのかと、複数の委員から違和感のような感想がもれた。独自の水源を持ち、県営水道の依存率が低い同市では、一体化の反対運動も起きている。

 同市の水道料金は県内で最も安く、県は一体化後、同様に水道料金が安い大淀町とともに、セグメント会計という別料金にすることを決めている。

 しかし両市町に対し、料金についての具体的な打診はまだ県からない。県域水道一体化準備室によると、昨年1月の覚書時点で、両市町はセグメントで実施することは盛り込んだが、それ以降、具体的な協議は行っていない。

 葛城市の南に隣接する御所市は、県内市部で最も給水人口が少ない。自治労奈良県本部の組合員らでつくる政策研究誌「自治研なら」は一体化を特集した最新号で同市の水道を取り上げた。令和10(2028)年度という節目の年に御所市の人口は現在より15%減少する見通し。

 同市の水道収入は年間わずか8億円。うち簡易水道統合整備事業協力金として年間2億円入ってきた収入が今年からなくなる。料金を35%引き上げないとやっていけないという。御所市にとって一体化への参加はメリットが大きい。

 こうした中、第三者の委員らに公開の場で意見を求めているのは奈良市のみ。毎回、多くの市民が傍聴に訪れ、今月31日の第5回の会合で最終回となる。委員からは「市町村ごとの地理的、歴史的違いの認識も一体化の論議には大事だ」という声も出ている。 関連記事へ

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