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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

奈良県域水道一体化 知事と対立の大和郡山市、近く県と協議へ 市長、会見で示す

県域水道一体化について県と協議を行う方針を述べた上田清大和郡山市長=2022年10月19日、同市役所

県域水道一体化について県と協議を行う方針を述べた上田清大和郡山市長=2022年10月19日、同市役所(浅野詠子撮影)

 2025年度に奈良県内の水道の事業統合を目指す県の構想を巡り、内部留保資金の在り方で荒井正吾知事と対立し、一体化に向けた覚書を締結しなかった大和郡山市の上田清市長は10月19日の定例会見で、同市の参加を模索する県の意向を踏まえ、近く県と協議に入ることを明らかにした。

資産の平準化と地下水源の使用を求め

 上田市長は県との協議に当たって、従前通り「資産の平準化と地下水源の使用を求めて交渉する」と述べた。

 県が大和郡山市の参加を模索していることを明らかにしたのは、奈良市の一体化離脱表明翌日の10月5日の知事定例会見。荒井知事は大和郡山市の参加に向けて対応策を考えていると述べた。その後、13日に開かれた県広域水道企業団設立準備協議会(会長・荒井知事、26市町村)は、会議用の配布資料(奈良市離脱後の方針)に「大和郡山市の意見を聞きつつ、調整を進めたい」と明記した。

 知事はこの協議会で「水道経営で得たものは水道経営のために使う」との持論を示した。一方で、香芝市の福岡憲宏市長の「内部留保資金というのは、その地域の水道のために経営努力によってためられたものであれば、そこに対し何らかの一定のルールで、水道施設の更新に対し有利なこと、優先的に充てられることが考えられてもよいのではないか」との提案に理解を示した。

 上田市長は、協議会であった提案について「協議していきたい」と関心を寄せ、「市議会の理解を得ながら県との協議を進めたい」と述べた。

 大和郡山市は2020年6月、ダムのみを水源とする当初の一体化構想への参加を前提として、地下水の市営浄水場更新のために積み立てた内部留保資金28億円(利益剰余金積立金)を一般会計に移転した。地方公営企業法施行令では、特定目的の積立金は議会の議決を経て目的以外に使用できる。

 この移転への批判を強める荒井知事の発言を受けて、市は広報紙で「持ち寄る資産等に一定のルールを定めて統合すべき」と主張。市民9人が翌2021年、「ルールなき県域水道一体化に反対する請願」を市議会に提出、市民の財産と水源を守り、渇水・防災に強い市営水道の存続と充実を図ることを求めた。市議会は全会一致で請願を採択した。これを受け市は、県に対し、資産の平準化と地下水源を使用する要望書を出していた。 関連記事へ

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