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ジャーナリスト浅野詠子

関西広域)兵庫県明石市に見る水道の水源転換 市の出前講座利用し市民団体が学習会

水道水源などに関する市水道局担当者の説明に耳を傾ける参加者=2022年11月6日、兵庫県明石市のウィズあかし

水道水源などに関する市水道局担当者の説明に耳を傾ける参加者=2022年11月6日、兵庫県明石市のウィズあかし

 兵庫県明石市は水道水源の3割を占める明石川の取水を中止し、2025年度から県内の阪神水道企業団からの受水と県営水道の受水増量に踏み切る。市内の市民団体がこの水源転換の背景や課題を知ろうと、市水道局の出前講座を利用して11月6日、市内で学習会を開いた。奈良県の県域水道一体化構想を取材してきた記者も参加した。

明石川取水を中止 県水増量、阪神水道企業団から受水へ 地下水源は存続

 学習会は、市民団体「市民自治あかし」(世話人代表・ジャーナリスト松本誠さん)の「第36回市民まちづくり連続講座 in 明石」。同市東仲ノ町の市複合型交流拠点ウィズあかしで開かれ、市民30人が参加した。

 明石市水道は1931年、深井戸を掘削して給水を開始。戦後の人口増により、明石川の取水が始まり、その後、県営水道(水源・呑吐ダム)の受水を1988年に開始し、これら三つの水源の給水形態が約25年間続いた。

 明石川の取水を中止する理由は水質と水量減少に課題があり、いずれも回復する見込みが乏しいこと。同川の水を処理する2浄水場は約50年間使用し、うち1カ所を更新するだけで100億円を超す費用が掛かることも中止の要因。同川の水で水道全供給量の29%(2021年)を賄ってきた。

 代って県営水道からの受水を増量し、新たに阪神水道企業団(神戸市など5市で構成、一部事務組合、水源・淀川)からも受水し、明石川中止分の半量ずつを両外部水源から補う。兵庫県営水道の購入単価は1立方メートル当たり120円で、奈良県営水道より10円安い。さらに阪神水道企業団からは90円で水道水が買えるという。

 出前講座には市水道局管理職ら4人が訪れた。阪神水道企業団からの受水について「一昔、二昔前は、神戸市の水はまずいといわれたこともある。これを返上したのは、凝集沈殿ろ過とオゾン活性炭処理による浄水の努力による」と説明した。企業団からの受水にあたり神戸市の水道施設を一部借りる。

 参加した市民から「水道水はより近くで確保することが大前提。明石川の取水が難しいなら(水源ダムが比較的近い)県水をもっと増量した方がよいのでは」という意見も出た。

 地下水源は今後も全供給量の約40%を占める。1立方メートル当たり64円50銭で製造できるが、海浜近くの深井戸は塩水化傾向が現れ、限りある資源に悩みもある。地下水を扱う市営魚住浄水場は2021年度から大規模改修に入った。

 明石市の水道料金は県内41市町村中11番目に安く、この16年間で企業債残高を3分の1近くまで減らした。敷設から50年が経過したような古い水道管はない。水道広域化に向けた動きもない。「多水源の確保は防災上大切」との市水道局の言葉が印象に残った。 関連記事へ

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