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ジャーナリスト浅野詠子

葛城市長、不参加を表明 県域水道一体化 奈良市に次ぎ2例目

市議会の特別委員会で県域水道一体化への不参加を表明する葛城市の阿古和彦市長=2022年12月16日、同市役所

市議会の特別委員会で県域水道一体化への不参加を表明する葛城市の阿古和彦市長=2022年12月16日、同市役所

 奈良県葛城市の阿古和彦市長は12月16日、県域水道一体化に参加しない方針を表明をした。2021年1月、一体化推進に向けた覚書を交わした27市町村のうち、協議から離脱する市町村は奈良市に次いで2例目。2025年度に一体化受け皿の企業団(一部事務組合)による事業統合を目指す荒井正吾知事は、関係市町村長に対し12月中に態度を決めるよう求めていた。

  記事の末尾に「県域水道一体化の動きと関連の出来事」

 阿古市長は、開会中の市議会12月定例会の県域水道一体化調査特別委員会(藤井本浩委員長)で単独経営を継続する方針を表明。「(県方針に基づき)貴重な水道水源(浄水場3カ所、水源・ため池8カ所)を廃止すれば、市民は大きな喪失感を持つことになる。きめ細かな住民サービスに努め、経営権をもって料金を決定することは独自のまちづくり。一体化、単独経営の双方を市は選択できる立場にある。ならば単独経営にチャレンジしたい」と語った。

 県が条件設定した料金試算によると、市が単独経営を続けた場合、企業団事業開始から約20年後、単独経営する市の料金の方が高くなる可能性もあり、委員会で示された。

 県が主導する一体化の方向は現在、水道施設と管路について更新実績を保障し、水道施設整備計画の尊重を前提とする立場。しかし企業団に移行すると、こうした施策は市独自では実施できなくなり、葛城市はこれを課題として捉えてきた。

 委員からは「県に対しもっと強い主張をし、市の優位性を高めて参加しても良かった」「一体化のうねりの中で、改めて地域資源としての水道を見つめ直すきっかけになった」などさまざまな意見が出た。

 市上下水道部は「さらなる水源開発を目指し、(自己水より割高な)県営水道の受水比率を低くするよう努め、料金の抑制につなげたい」と抱負を述べた。

 市議会が一体化調査特別委を設置したのは2020年6月。熱心に傍聴する市民たちの姿があった。藤井本委員長は委員会で「市民の自己水愛は強かった」と振り返った。

 県水道局県域水道一体化準備室は「一体化参加の首長としての最終判断は県広域水道企業団設立準備協議会宛てに回答することを協議会は了承しており、葛城市からの回答はまだ届いていないのでコメントは控えたい」と話した。

県域水道一体化の動きと関連の出来事

2013年3月 工事に50年の歳月をかけた大滝ダム(国土交通省)が川上村に完成。県は高度成長期の水需要予測を基にした巨額なダム建設負担金を支払って参加。水余りの時代が到来し、県営水道(用水供給事業)の対応が迫られるようになる。

2016年3月 県内給水人口第2位の橿原市が市営八木浄水場(水源、地下水)を廃止し、大滝ダム系の県営御所浄水場からの受水100%に転換。

2016年11月 大滝ダムを主水源とする水道広域化の経済効果などを試算するため、県がコンサルタント業務を発注。

2017年10月 県が「県域水道一体化の目指す姿と方向性」を県・市町村サミットで提示。水源はダムのみとし、奈良市営緑ケ丘浄水場を除く県営水道受水市町村の浄水場を廃止する構想を打ち出す。

2019年10月 水道民営化に新たな道を開き、広域化を推進することを主な柱とした改正・水道法が施行

2020年6月 大和郡山市が水道の内部留保資金82億円のうち28億円を一般会計に移転。すべての資産持ち寄り方針を掲げる荒井正吾知事と意見対立。

2020年8月 県は2017年の緩やかな経営統合方針(10年以内に料金統一)を改め、2025年に一体化受け皿の企業団(一部事務組合)設立と同時に料金を統一する方針を県水道サミットで示す。

2021年1月 県と27市町村が水道事業統合に向けて覚書を締結。大和郡山市は加わらず。

2021年3月 大和郡山市民の「ルールなき県域水道一体化に参加しないことを求める」請願を市議会が全会一致で採択。

2021年8月 県広域水道企業団設立準備協議会(会長・荒井知事、県と27市町村)発足。

2021年12月 県が一体化の統一料金を試算し、1立方メートル当たり178円を示す。単独経営をすると企業団より料金が高くなると試算した市町村の根拠について、県は奈良市議らの開示請求に対し、2022年に不開示決定した。

2022年2月 水道会計累積赤字市町村を救済する方針を県が固める

2022年5月 奈良市が学識経験者や市議らに一体化への参加の是非や意見を聞く懇談会(座長、浦上拓也近畿大学教授)を設置し初会合。8月まで5回開催し、延べ213人の市民が傍聴。

2022年6月 葛城市区長会(44カ大字)が県域水道一体化への不参加求め市議会に陳情、「市の判断で価格設定できる命の水が大切」と訴える。

2022年6月 葛城市民が一体化に対し「市民に説明し声を聞くよう」求める請願を出し、市議会が全会一致で採択。

2022年9月 生駒市民が一体化の「市民への周知等に関する」請願を出し、市議会が全会一致で採択。

2022年10月 奈良市の仲川げん市長が一体化構想に参加しないことを表明。

2022年11月 生駒市が市民説明会を開催。

2022年11月 奈良市の協議会離脱を踏まえ、大和郡山市の参加を促すため持ち寄り資産のルールを作り、同市営昭和浄水場(水源、地下水)を存続する方針を県が固める。

2022年12月 大和郡山市の上田清市長が市議会全員協議会で参加に前向きな意思を表明。

2022年12月 葛城市が市民説明会を開催

2022年12月 葛城市の阿古和彦市長が市議会・県域水道一体化調査特別委員会で不参加を表明。 関連記事へ

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