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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

「事業統合で20年先の料金統一も可能」 奈良県域水道一体化の検討当初、厚労省が県に見解

奈良県庁=2023年7月、奈良市登大路町

奈良県庁=2023年7月、奈良市登大路町

 水道の大型統合として注目される奈良県域水道一体化構想を巡り、事業統合を選択した場合、料金の統一は20年先でも可能とする見解を厚生労働省が県に示していたことが、2019年8月、橿原市内で開かれた一体化検討会の議事要旨から分かった。

 議事要旨によると県水道局は「厚労省に相談した結果、事業統合であっても当初から料金統一しなくてよく、10年もしくは20年で料金統一するといった事業計画である場合、統合当初から事業統合として認可を1本で取得することが可能という回答を頂いた」と参加28市町村に報告した。

 水道の広域化や民営化(コンセッション方式)を促す改正・水道法施行の1カ月前に当たる。

 広域化には経営統合という手法もあり、組織や管理などの経営基盤を共通化するが、事業や料金は参加団体ごとに別形態を取る。国の回答は経営統合について、参加する水道事業ごとに認可が必要となり、認可をまたいで水融通する際にも手続きが複雑になると難色を示し「総務省も厚労省と同意見であり、いったん経営統合すると個別最適化が優先され、事業統合が困難になるため、事業統合を目標とするのであれば時間を要してでも当初から事業統合の方針で進めてはどうか」と県に助言したという。

 一体化構想を進めてきた荒井正吾前知事が当初の経営統合方針を改め、事業統合にかじを切るきっかけになったと見られる。県は2020年8月、統合当初から料金統一を前提に論議することを決めた。その後、給水人口が最大の奈良市が2022年10月、一体化の協議から離脱し、自己水源が豊富で水道料金が安い葛城市も同年末、不参加を表明した。

 山下真知事は今年7月の一体化協議会で料金試算の見直しに意欲を示し、受け皿の県広域水道企業団(一部事務組合)が統一料金で事業を開始することには必ずしもこだわらないとした。8月の定例会見では「経営統合の論議は出ていない」と述べている。 関連記事へ

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