奈良市高畑町のヴォーリズ建築、保存と活用を探る集い
ヴォーリズ建築とゆかりが深い滋賀県近江八幡市内の町並みを解説する山形政昭さん=2025年7月6日、奈良市東寺林町の市ならまちセンター、浅野詠子撮影
米国出身の建築家、ウイリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964年)が設計した奈良県内唯一の建物とされる日本画家の旧居兼アトリエを巡り「高畑・旧栗盛吉蔵邸の保存・活用を考えるフォーラム」が7月6日、同市内であり、約80人が参加した。
1935年ごろの建築とされる。大手住宅メーカーが今年3月、建物を解体して敷地を販売することを前提に取得したことから有志が開いた。ヴォーリズ建築に詳しい関西学院大学国内客員教授の山形政昭さんが講演。「本日はたくさんの人が集まり感動した。保存運動の担い手は持続ある発信力が大事」と激励した。国内には風土に溶け込むヴォーリズ建築もあり、地域資源としての多様な活用例があると具体的に解説した。
「奈良の声」記者の浅野詠子は「志賀直哉を取り巻く文士と画家が交流した高畑サロンを巡っては、当事者の書斎やアトリエ、旧居などが幾つも現存し、不思議な力が湧いてくるような空間。かけがえのない景観で、栗盛旧居は重要な位置にあり古道の柳生街道にも面している」とした。
フォーラムを主催した「高畑・旧栗盛吉蔵邸の保存・活用を進める会」(大槻旭彦代表世話人)がこれまで探ってきた保存と活用のアイデアについて、メンバーの倉本宏さん(奈良まちづくりセンター理事)が報告。工芸体験や芸術家との交流、レストラン、ゲストハウス、「たんぽぽの家」を参考にした福祉的な芸術活動など、いろいろな意見が同会メンバーの建築士や町家研究者らから出ていると述べた。
会場からは、滋賀県近江八幡市内でヴォーリズ建築の元郵便局の再生に参画した市民が「個人が所有する元特定郵便局の建物を守るため、会費を集めてこつこつボランティアで改修した。町のシンボルは残さないといけない」と意見を述べた。
大槻さんらは、栗盛旧居を所有する大手住宅メーカーに対し、この日の行事を報告し、保存に向けた話し合いを進める。
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