サシバの観察会 タカの仲間、繁殖地の奈良県山添村で 約30人が参加
サシバの観察会に参加した人たち。右端は与名正三さん=2025年7月6日、奈良県山添村、浅野善一撮影
海を渡るタカの仲間として知られるサシバの観察会が7月6日、奈良県内の繁殖地の一つ、山添村であった。環境省レッドリストで絶滅危惧種とされているサシバの保護を目的に、奈良盆地周辺で生息繁殖状況を調査している奈良猛禽(もうきん)類研究会が主催、小学生から大人まで県内などから約30人が参加した。
サシバはカラスくらいの大きさで、夏に本土で繁殖し、鹿児島県の奄美大島やフィリピン周辺で越冬する。繁殖地は田んぼなどがある里山周辺で、カエルやヘビ、昆虫などを餌にしている。かつては里山の猛禽として身近に生息していたが、近年は田畑の休耕や宅地開発などの影響で生息が確認されなくなっているという。同研究会は奈良県内で35カ所の繁殖地を確認していて、うち11カ所が山添村内という。
この日は、初めに奄美大島出身で野鳥写真家の与名正三さんが村内の施設でサシバについて解説。本土で繁殖した1万2000~1万3000羽のサシバのうち2300羽が同島で越冬することや、餌を捕るのは雄で、ひなを天敵から守るのは雌の役割であることなどを紹介、「餌となる生き物が多様な地域にいるのがサシバ。サシバを守ることが環境を守ることにつながる」と説明した。
与名さんは現在、同島と本土の2拠点生活を送りながらサシバの保護活動に取り組んでいる。「奈良の声」で連載「野鳥 自然を生きる知恵」も執筆した。
観察場所で姿を見せたサシバ(左上)=2025年7月6日、奈良県山添村、浅野善一撮影
この後、サシバが営巣をしている観察場所へ移動、双眼鏡やカメラを手に姿を見せるのを待った。1時間余りの間、姿を見ることができた時間はわずかだったが、山林の上空を飛ぶサシバを確かめることができた。参加者は、肉眼では小さくしか見えないサシバの姿を双眼鏡などで追っていた。
同研究会代表の橘正勝さんは観察会の狙いについて取材に「奈良県の人にサシバのことを知ってほしい」と答え、参加者に向けて「繁殖地を見つけたら情報を提供してほしい」と呼び掛けていた。
今年10月、奄美大島の宇検村で第5回国際サシバサミットが開催される。実行委員会のメンバーでもある与名さんらは次回2028年のサミットについて、山添村での開催を目指している。
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