2014年3月27日 浅野善一

奈良県:奈良市連絡所、都跡が3月末で廃止 市、11年に統廃合計画は撤回するも

都跡連絡所の入り口に掲示された連絡所廃止を知らせる掲示=2014年3月、奈良市四条大路5丁目

 奈良市の11ある連絡所のうち都跡連絡所(同市四条大路5丁目)が3月31日で廃止される。市が事業仕分けの結果を受けて、2010年12月、連絡所の統廃合計画を公表した際は、連絡所のある地区自治連合会の会長が連名で存続を求め、市議会では議員の多くが存続を求めた。市は計画を撤回した。それから、わずか3年、都跡連絡所廃止に対しては、地元連合会の存続要望はなく、市議会での議員の質問もない。市が公表したのは廃止の事実ぐらい。大方の市民は何がどうなったのか分からない。説明は置き去りにされた。

市民への説明置き去り、存続請願採択の議会も

 連絡所は、かつて市と合併した村の役場を継承したものが主。業務内容は市から住民への通知、自治会など地域の各種団体との連絡調整、市税や保険料の収納、住民票や戸籍証明書の交付の本庁への取り次ぎなどだ。2、3人の職員が配置されている。所在する地域は市東部に偏っていて、新興住宅地が広がる市西部にはない。

 2010年7月の事業仕分けで、利用件数と経費の釣り合いや地域偏在などの点から、市民判定員に「要改善」の判定を受け、統廃合を検討すべきとされた。市は、12年度をめどに11の連絡所を3つの出張所に集約する計画を公表した。

 これに対し、連絡所の所管地域にある13の地区自治連合会の会長は10年12月、連名で存続を求める請願書を市議会に提出した。請願書は、連絡所が身近な行政サービスの場となっていることや、行政との協働の基点になっていることなどを挙げ、地域住民にとってなくてはならない存在と訴えた。

 仲川元庸市長は11年2月、自身のブログであっけなく計画の撤回を表明した。理由について、11年3月市議会定例会では「関係する地区自治連合会長をはじめ地域の皆さまから存続を求める声が寄せられる中で、地域ごとに、求められる役割や機能、住民の思いに差があることも受け止め、より慎重な対応が必要であるとの判断に至り」と説明した。

 市議会は多くの議員が本会議や委員会で統廃合計画を批判した。当時の会議録によると、「地域コミュニティーの再生が、治安回復、防災・防犯、児童虐待防止、買い物難民や地域で子供をはぐくむなどの細かい行政サービスが必要な中で、連絡所はその中心的な役割を担っている」(政翔会、植村佳史議員)、「統廃合ではなく、現在の事務とともに地域コミュニティーの核としての役割も担えるように充実すべき」(共産、松岡克彦議員)などと、連絡所の存在意義を強調した。

 11年9月定例会では請願を採択した。議員39人中35人の圧倒的多数が賛成した。賛成したのは、いずれも当時の政翔会、公明、共産、民主(6人中4人)、政友会の各会派と無所属の5人。賛成しなかったのは民主の2人と無所属の2人だけだった。

 都跡連絡所の廃止は、連絡所と連絡所に隣接している公民館分館を、14年度に地域ふれあい会館(集会施設)に建て替えるのを機に実施される。連絡所と公民館分館は1933年に建てられた木造の旧都跡村役場庁舎と議事堂で、都跡地区自治連合会が老朽化や耐震性を理由に2012年3月、ふれあい会館への建て替えを求める請願書を市議会に提出していた。

 市は廃止の案内ちらしを、昨年12月からことし2月にかけ、所管地域の都跡地区と六条校区地区の両自治連合会の住民に配布した。ちらしは廃止の理由について、建物の耐震化が成されておらず危険な状況にあるためとしたが、統廃合計画には触れていない。3月発行の市広報「奈良しみんだより」のお知らせや連絡所入り口の掲示も、廃止後の窓口の案内にとどまった。

 市地域活動推進課によると、11の連絡所の大半は公民館やふれあい会館に併設されているが、都跡地区自治連合会から新しく建設されるふれあい会館への併設の要望はなかったという。澤野井保課長は「廃止について理解してもらっているのだろう」とした。

 同地区自治連合会の藤田正博会長は存続を求めた請願について、「あのときは市長が突然に廃止と言った。事前に話をされて、経過を説明してもらい、論議されていたら問題はなかった。請願は、最初に旗を揚げた各自治連合会長の関係で名を連ねただけ」と説明した。ただ、「市役所の説明で納得はしていない。やはり残してくれということは訴えた。行政から廃止すると言われて、はいそうですかとは言っていない」と、廃止をすんなりと受け入れたわけではないことも強調した。

 市議会のこの3月定例会には、都跡地域ふれあい会館整備事業費を盛り込んだ14年度予算案が上程されたが、都跡連絡所廃止に関する質問は全くなかった。

 都跡地区に住み、連絡所の存続を求める請願で紹介議員の一人として名前を連ね、また、ふれあい会館への建て替えを求める請願でも紹介議員を務めた森田一成議員に聞いた。森田議員は「請願という形ではないが、建て替えが決定するまで、連絡所も併設してほしいと、私一人だけでなく自治連合会からも市に要求してきた。都跡だけなくして、どうするのか、と」と存続を求める思いに変わりがないことを強調した。

 一方で、議会で質問がなかったことについては「地元から質問してくれという要望もなかった。独り歩きして質問するわけにはいかない。連絡所が全地域にあれば公平な話で大きな声で言えるが、現状は特別扱い。村役場から市への移行措置として交わされた約束は何十年前の話か。まして都跡は市役所の直近の場所。そういう理屈も分かってほしい」と説明した。

 記者は2月、市に対し、ふれあい会館建設要望で都跡地区自治連合会と行った話し合いの記録、市内部で検討した記録について開示請求したが、そうした文書は作成されていなかった。開示された都跡地域ふれあい会館整備事業の14年度予算要求書には、「連絡所に関しては近距離に市役所本庁、市民サービスセンター、また西部出張所も利用可能範囲にあり、地域における必要性が低下してきた」との説明があるのみだった。

 事業仕分けに始まった連絡所の統廃合問題は、計画の撤回から再び一連絡所の廃止へと転じた。地元からの反発がなければ、市民への説明は不要なのか。存続を求めた議員の議会での発言や請願を採択した議決は重い。しかし、都跡連絡所廃止を受け、連絡所が必要か否かについて議会であらためて論議されることはなかった。言いっぱなしは怠慢だ。議会での公開の論議やそれに対する市の説明が求められる。

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