ニュース「奈良の声」
2014年9月21日 浅野善一

奈良県のサイト未公表問題、平城京レポートの誤記発覚で見合わせ

 奈良県が日本と東アジアの未来を考えることを目的に開設したインターネットサイトが、未公表のまま短期間で廃止されていた問題で、県は21日までに、公表に至らなかった理由について「奈良の声」の取材に回答した。それによると、同サイトでの公開を前提に制作した奈良の観光情報について、県の同じ平城遷都1300年記念事業で作成された平城京レポートに多くの誤記が見つかる問題が起きたことから、記載内容を精査する必要があると判断、公表を見合わせたという。サイトが新たな火種になることを恐れたとも見える。数千万円の規模になる事業の県民への還元は置き去りになった。

 これまでの取材では次のことが明らかになっていた。

 サイトは、同記念事業の一つ、弥勒プロジェクトの中の取り組みで、ポータルサイトの「NARASYS(ナラシス)ネットワーク・スタジオ」を入り口として、電子会議室「NARAcom(ナラコム)」と、検索機能を持つウィキペディア型のアーカイブ「NARApedia(ナラペディア)」にアクセスできる構成になっていた。「日本と東アジアの未来を考える委員会」の会員らによるナラコムでの議論をナラペディアに蓄積し、知のアーカイブを構築するとしていた。08年度の基本設計を経て、09年度末、ネット上に開設され、運用が始まった。

 観光情報は10年度に制作された。「2010年の奈良」をテーマに1300年祭が開かれた年の県内の実景を記録化したもので、風景、文物、催事などを撮影したデジタル写真1万点、項目数にして1000件に解説を付け、ナラペディアに掲載した。しかし、県はサイトの開設やそのアドレスについて公表していなかったため、一般の人がアクセスし、閲覧することは不可能だった。11年度末、サイトは運用わずか2年で廃止された。当時、同サイトで公開できる情報は「2010年の奈良」以外になかった。

 県は、サイトの設計や運用の外部委託で1769万円、「2010年の奈良」制作の外部委託では1300年記念事業式典で上映されたイメージ映像の制作費も含んだものになるが5998万円を支出した。

 一方、誤記が問題となった平城京レポートは、「2010年の奈良」の制作が進められていた10年12月に発表された。「日本と東アジアの未来を考える委員会」がまとめた提言集だが、事実誤認のほか、固有名詞や年号の誤りなどが多く見つかり、新聞報道や県議会の会議で批判を受けた。

 県国際課は「ナラペディアについては10年度、奈良の自然や行事、寺社などの情報を集め、掲載したが、平城京レポートが誤記などで問題となった時期でもあり、記載内容を十分確認することとし、公表するには至らなかった」とした。11年度についても「記載内容の確認には着手したが、公表できる水準の確認にまで至らなかった」とした。今後の扱いについては、別の利活用の方法を検討しているという。

本格運用予定の年に廃止の判断

 県はまた、ナラコムへの「考える委員会」の会員らからの意見の投稿が2010、11年度の2年間で11件しかなかった上、予定していた議論内容などのナラペディアへの蓄積がなかった理由についても回答した。

 これまでの取材で、投稿は10年度が11件、11年度がゼロだったことが分かっている。県国際課は10年度の議論については「モデル会議という設定だったため内容の蓄積にまでは至らなかった」とした。11年度については「議論以前の『考える委員会』の在り方に検討が加えられることになった結果、利用がなかった」とした。

 同課によると、サイト廃止の理由は「委員が実際に集まって議論する場が確保され、ナラコムを利用せずに議論が可能になった」「会議室機能はツイッターやフェイスブックで代替が可能な状況となった」「ナラコムとの連携を前提としていたナラペディアも運用を中止することにした」など。

 ナラペディアについては当初、可能なものから順次、収集・掲載していく方針で、10年度に「2010年の奈良」を掲載、11年度以降、ナラコムで行われた議論の内容を掲載していく予定だったという。本格的な運用を予定していた開設2年目に廃止を判断したことになる。

 サイトは、日本総合研究所、松岡正剛事務所、編集工学研究所の共同企業体が08年11月に提案した弥勒プロジェクトマスタープランを受けて開設した。プロジェクトの柱の一つだった。当初はより高度なシステムを想定していたが、技術面、費用面の問題があり、計画途中で事業規模を縮小している。プロジェクトをめぐっては、県議会でも進め方や支出に対し批判があった。プロジェクトは当初、1300年記念事業後も継続する予定だったが11年度で終了した。

 同サイトは実質がほとんど伴わなかった。計画性が乏しかったのではないか。県国際課は「外部環境の変化も勘案しつつ、当初想定に固執せず、適時適切に見直しを行いながら、事業を遂行してきた」としている。

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