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発行者/奈良市・浅野善一
フリージャーナリスト浅野詠子

奈良県)奈良きたまち、昭和の銭湯「勇湯」閉店へ 85年の歴史に幕

閉店する銭湯「勇湯」

多くの人々が親しみ、交流し、くつろいだ銭湯「勇湯」=2015年1月30日、奈良市半田横町

 1930(昭和5)年に開業した奈良市半田横町の銭湯「勇湯」=いさみゆ、磯崎正幸さん(60)経営=が来月1日、惜しまれながら85年の歴史に幕を閉じる。辺り一帯は生活感のある歴史的町並みが広がり、奈良きたまちの名で知られる。古い公衆浴場はこの町の景観の引き立て役だった。

 すぐ近くには明治建築の建物が残る奈良女子大学がある。勇湯は同大学が旧制女子師範だった頃から、学生にも親しまれてきた。近年は利用客が減り、建物や設備が老朽化し、修繕費がかさむことなどからやむなく閉店を決めたという。

 同銭湯の目と鼻の先に町家の古書喫茶「ちちろ」がある。1936(昭和11)年、俳人・種田山頭火がこの町家を訪れたという情報は2000(平成12)年、店主で俳優の宇多滋樹さんが湯船で銭湯仲間から仕入れた話がもとになった。その後の宇多さんらの調査で、山頭火の足跡がくっきりと浮かび上がった。

 勇湯は当時と変わらぬ外観を保ち、年代ものの脱衣箱にも木工職人の技が光る。店じまいを告げる軒下の張り紙には「急な閉店をお詫(わ)び申し上げますとともに、これまでのご愛顧に対し深く感謝申し上げます」とあった。通り掛かったお年寄りの男性は「子どもの頃から親しんだ銭湯です。よし、閉店までにもう1回漬かりに来るぞ」と感慨深げに話した。

 経営者の正幸さんの母で、女湯の番台を仕切る幸子さん(85)は「河瀬直美さん(映画監督)や尾野真千子さん(女優)もうちの湯につかってくださったのですよ。修繕して続けたい気持ちはあります。とても残念です」と話した。

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