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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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コラム)メガソーラー 大災害の現実味/政治と憲法の風景・川上文雄…24

平群町・椿台地区の住宅群。約900メートル先の地点で膨大な量の盛り土をする計画があり、土石流災害の発生が懸念されている。盛り土の方角を背に筆者撮影(2022年1月25日)

平群町・椿台地区の住宅群。約900メートル先の地点で膨大な量の盛り土をする計画があり、土石流災害の発生が懸念されている。盛り土の方角を背に筆者撮影(2022年1月25日)

 奈良県平群町のメガソーラー。開発会社が県に提出した林地開発許可申請の書類に、防災計画が示されています。計画の基礎となるべき数値を操作していて、実にいい加減です。そのことが「平群メガソーラーを考える会」(以下、「考える会」)の資料を読むと分かります。開発を許可した県も昨年の6月に工事停止指示を出しました。

 では「まともな災害対策を再提出して工事は再開」となるのか。そうはいきません。48ヘクタールの広大な山林を丸裸に皆伐した建設用地。さらに大量の盛り土をする計画です。このように工事による地形の改変があまりに過激な場合には、対策のとりようがない。豪雨による大量の流水の制御は不可能になるのではないでしょうか。

 制御不可能な災害というと、福島第一原発の事例があります。原子炉溶解(メルトダウン)による放射能の拡散。大規模地震・津波に対応するための根本的な対策を怠って大惨事を起こしました。しかし、平群の場合は「根本(基本)を忘れない」が通用しない。怠ってはいけない根本対策がそもそも存在しないのではないか。その意味では、福島原発よりも深刻です。

 大災害が現実味をおびている。建設そのものの中止を考える必要がありそうです。

建設用地として危険

 用地のいたるところに存在していた深い谷は、すでに建設残土で埋められ、さらに大量の盛り土を広い地域に施すという計画です。いくつかの盛り土区域の1つは、真下900メートル先に戸建て住宅から成る椿台団地があり約500世帯、1000人ちかい住民が暮らしています(隣接する緑ヶ丘、若葉台の戸建て団地を加えると、約2000世帯、4500人の住民)。

 この盛り土は長さ250メートル、厚み10~15メートル、高低差50メートル、総量30万立方メートル。これにより、土石流災害のあった静岡県熱海市と同様の水害にきわめて弱い地形・地質の地域が出現するとのことです。ほかの地域の盛り土も「メガ盛り土」という表現がピッタリの規模で、そちらも心配です。

防災計画でデータ偽装

 このように立地条件が最悪であるならば、防災対策としての合格基準はきわめて高くしなければなりません。しかし、会社の防災計画は根本のところで問題があります。開発許可の申請に際してでたらめな計算をしていました。流下能力の偽装計算などがあったのです。

 勾配の偽装:山上の開発地から下流の住宅地まで全て18%の急勾配にして無理やり水が流れるようにしてある。実際には勾配が小さく水は流れない。大雨が降ると今までの1.6倍の雨が流れ込み(山林を皆伐して保水力が低下)災害が発生する。

 水流の危険性:最大で1秒間に30メートルを超過。熱海市を襲った土石流でも流速は10メートル程度であり、異常な流速を平気で書き込んでいる。

 計算・数値は実態をまったく把握できていない「机上の空論」のようです。大量の水も速やかに流れ去ってくれれば災害にならない。そこで、勾配を急にして水流を速くするという、つじつま合わせの数字操作をした。しかし、盛り土をした谷筋に集まって大量の水が流下すれば、土石流の氾濫が発生するでしょう。

 (以上は「考える会」ブログ2021年6月24日、および昨年12月11日「メガソーラーを考える奈良の会」発足集会で配布の資料に依拠)

防災の決め手なし

 住民たちが納得できる防災計画をなぜ提出できないのか。理由の1つは、利益が減るから費用をかけたくないという基本姿勢にあると思われます。しかし、もっと深刻な理由を筆者は考えます。安全・確実な、科学的に信頼できる計画は誰も作れないということです。防災の決め手がないのです。

 「対策もどき」を提示し続けるのではないでしょうか。実際、会社側は幅50センチの放水路を建設して1時間に3万トンを流すという対策を追加したことがあります。こんなに大量の水を流したらどうなるか。大雨が降れば900メートル先の団地に濁水が1分たらずで襲ってくると、地域の人たちは予測しています。

 では、幅をさらに広くすればいいのか。放水路の数を増やすのか。しかし、山林を大破壊して、大量に盛り土して造成される用地は、科学的なデータに基づいて水害(土石流災害)を制御できる対象ではなくなっている。むしろ、制御できると考えるのは非科学的です。普通の頻度で発生する豪雨であっても(熱海もそうではなかったでしょうか)、災害を起こすほどに危険な状態です。さらに、そのレベルを超える豪雨も想定しなければなりません。

 建設を断念することが本当の科学的思考だと思います。建設すれば、メガソーラーを頂く山は、どんな対策も通用しない制御不能の不気味な塊。山には解除方法の分からない時限爆弾が仕込まれている。だれもそんな危険と不安のなかで暮らしたくありません。平群町だけでなく日本全国このような事例が増えていくのでしょうか。山林地域のメガソーラー反対の世論が強くなることを願っています。

【追記】

 土石流災害のあった静岡県熱海市の地形と平群町メガソーラー建設用地の地形の類似性。地図と画像を使った詳しい解説が「考える会」のブログ2021年7月8日(「盛土は危険です」)にあります。ブログの最新ページがhttps://blog.goo.ne.jp/heguriにあり、そこから該当する年月日のページにアクセスできます。開発申請書類の「数値偽装」(2021年6月24日)も同様です。なお、福島原発事故については第12回コラムで書きました。

(おおむね月1回更新予定)

川上文雄

かわかみ・ふみお=客員コラムニスト、元奈良教育大学教員

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