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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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連載)政治と憲法の風景/川上文雄…記事一覧

連載)政治と憲法の風景/川上文雄(客員コラムニスト)

 奈良教育大学で長年にわたり、政治学を教えてきた川上文雄さんが憲法を一つの軸に、政治や社会の課題について考えます。憲法をいま一度、読み直し、そのまなざしを起きているさまざまな問題に向けます。全32回。

川上文雄

 かわかみ・ふみお 奈良市在住。元奈良教育大学教員、政治学博士(プリンストン大学)。1951年千葉県市川市生まれ。1974年早稲田大学政治経済学部卒業。「参加民主主義論者のサービス・ラーニング論―ボランティア学習の政治思想的基礎」(2003年、政治思想学会「政治思想研究」第3号)などの論文がある。2016年4月から居宅介護支援事業所を経営する合同会社の業務執行社員。社会福祉法人わたぼうしの会評議員、エイブル・アート・ジャパン会員、水俣フォーラム会員。コラムの第2弾「川上文雄のじんぐう便り」もご覧ください。 記事一覧

記事一覧

  • 筆者のアートコレクションから吉元敦也「砂紙」 1)学びなおす 2016年の3月まで29年間、奈良教育大学の教員でした。所属は社会科教育講座、分野は政治学。定年退職後は同じ大学で非常勤講師を4年、それも今年の3月で辞職しました。もう教壇に立つことはありません。しかし、これまで授業を準備しながら考えたこと、授業で話したことを振り返りながら、政治と社会の課題・問題を考え続け、それを文章にして発表したいと思うようになりました。(2020年7月14日)
  • 筆者のアートコレクションから光島貴之「無題」。作品に添えられた作者からのメッセージ「気分が沈んできたら、この渦巻きを指でなぞってみてください。きっと元気が沸き起ってくるはずです」 2)ささやかでも豊か 憲法25条「最低限度の生活」 コロナ禍のなか「新しい生活様式」という言葉が使われ始めた時代。日本国憲法第25条は何を語りかけているのか。条文にある「健康で文化的な最低限度の生活」の「最低限度の生活」とは、いかにも頼りなさそうな感じがします。しかし、「健康で文化的な生活」は「幸福な生活」と言い換えることができます。(2020年7月28日)
  • 筆者のアートコレクションから石井誠「花」。作者は、先天性筋ジストロフィーをわずらいながら創作活動を続けた。2014年、32歳で逝去 3)赤木俊夫さんを忘れない 財務省の職員・赤木俊夫さんは、森友学園への国有地払い下げに関する公文書(決済文書)の改ざんに加担させられたことを後悔し、強度のうつ状態のなか2018年3月みずから命を絶った。死の直前、赤木さんは身の上に起こった経緯を手記に書き残していた。絶望のなかにあっても国民への説明責任をはたそうとした。(2020年8月11日)
  • 筆者のアートコレクションから木村昭江(きむら・あきえ、1979年生まれ)「フラメンコドレス」 4)選挙権、拡大と除外の歴史 公職選挙法には「選挙権及び被選挙権を有しない者」を規定した条文があります。第11条1項がそれで、1号から5号まで「欠格者」を列挙しています。1項1号は、2013年3月東京地方裁判所の判決で憲法違反とされ、控訴もなくこれが確定。その後の法律改正により削除されました。以前、そこにあったのは「成年被後見人」の語句でした。(2020年8月29日)
  • 筆者のアートコレクションから久田奈津紀「雪」 5)選挙「特権」を終わらせた裁判 アメリカの大学院に留学していた時のこと。運転免許証を取りたくて、管轄の行政機関が発行する冊子を読むと、「免許証の取得は権利rightではなく特権privilege」の1文がありました。車社会のアメリカでは、ほぼ全員が持っている運転免許証。でも、試験を受けて能力を認定された「あなた個人」に特別に与えられるものは、権利ではなく特権なのです。(2020年9月16日)
  • 展覧会「たんぽぽの家の仲間たち」(筆者は共同企画者)のイメージ作品「コミュニティコレクションがつなぐ縁」(福岡左知子「織りのベルト」+たかはしなつき「moon」+アボカドの種を筆者が構成・撮影) 6)憲法は「みんなで幸せ追求しよう」という呼びかけ 今回のコラムは13条の「幸福追求権」をはじめとする日本国憲法のいくつかの条文を理解するうえで、筆者が決定的な影響を受けた見解をとりあげます。山浦玄嗣(やまうら・はるつぐ)が「イエスの言葉 ケセン語訳」(2011年、文春新書)で述べている見解です。著者は1940年生まれ、東北大学助教授を経て1986年より岩手県大船渡市で医院を開業。本の帯には、被災地の医師がふるさと(岩手県気仙地方)の言葉で聖書を訳した本とあります。(2020年10月15日)
  • 筆者愛用のティーポットと毎日飲んでいるそば茶。そばは北海道オホーツク海沿岸の町で栽培 7)食と政治の接点 4年前に退職してから、食事をつくる機会が増えて、調味を意識するようになりました。「塩は味見をしながら、分けて入れる」は基本中の基本。その他、良い味を出すための工夫はなんであれ調味だと思います。調味についていろいろ考えているうちに、食と政治には接点があると気づきました。(2020年11月16日)
  • 筆者のアートコレクションから大槻修平(おおつき・しゅうへい、1981年生まれ)「ぼくの好きな手をつなぐなかま」。手の部分は画用紙を貼り付けている 8)納税は権利である 税金を集めて、それを使う。政治の最大の責務です。納税の意欲をそぐ出来事が頻発する現状は、政治の危機にほかなりません。アベノマスクの配布。感染予防の効果が疑われたマスク、使用した人は極端にすくなかった。使った税金は500億円超とか。コロナ対策の「持続化給付金」事業では、約770億円が広告大手の電通に利益が還流する仕組みが発覚、問題になりました。「納税の意欲」と言っても、そもそも納税はなぜ必要なのか。私たちが押さえておくべき基本です。納税は主権者である国民による主権の行使。義務であると同時に権利。筆者はそのように考えます。(2020年12月15日)
  • 筆者のアートコレクションから荒井陸(あらい・りく、1995年生まれ)「緑の葉っぱ」 9)水野さんのたこ焼きと福祉の基本 水野晃男(みずの・あきお)さんのことを知ったのは約2年前。50歳代前半の男性で、仕事は滋賀県栗東市にある「道の駅」の駅長。母子家庭で育ったこともあり、経済的に苦しい家庭の子どものために、たこ焼きを作っている。開店は週に1度、2~3時間。1皿7個の値段はとても安くて、小学生10円、中学生30円、高校生50円(その後、中学生20円、高校生30円に値下げ)。大人は買えない。(2021年1月15日)
  • 猿沢の池付近の風景(2012年7月12日、筆者撮影) 10)コロナ感染した留置場の「男」たち 昨年(2020年)4月、新型コロナウイルスの集団感染が東京都の渋谷警察署留置場で発生。感染者は7人、そのうちの5人は逮捕・勾留中の人でした。この5人について、「男」と表現したメディア(新聞、テレビ)と「男性」と表現したメディアがありました。読者のみなさんが記者だったら、どちらにするでしょうか。(2021年2月4日)
  • 筆者の娘の作品。中学2年の時、美術の授業で作ったもの 11)生徒のいじめ自殺、学校側調査のあり方 2011年10月、滋賀県大津市立の中学校で2年生男子が同級生のいじめを苦にして自殺しました。両親は学校側に真相の調査を求めますが、受けた報告・説明はまったく不十分なものでした。真相解明の願いもこめて両親が起こした訴訟は、先月25日に最高裁判決が出て、元同級生2人への賠償命令(400万円)が確定しました。これを機に、当時の調査を振り返りながら、この種の調査はどうあるべきかについて考えます。(2021年2月23日)
  • 石井悠輝雄(いしい・ゆきお、1980年生まれ)「古里」。作者は奈良芸術短期大学専攻科日本画コース修了、現在は福岡県で創作活動。筆者のアートコレクションから知人に贈った作品 12)福島原発の事故賠償、国の「製造物責任」を問う 大規模な地震と津波に襲われた福島第1原子力発電所。運転中の原子炉1~3号機が炉心融解(メルトダウン)して福島県内外の広い地域を放射能で汚染。甚大な被害をもたらしました。ふるさとの喪失―生活基盤を根こそぎ破壊された地域もあります。国家的事業として建造・維持されてきた原発は、国と電力会社が共同して作った製造物。その設計上の欠陥が大惨事の原因でした。「製造物責任」の考えにしたがって、国の損害賠償責任を明らかにします。(2021年3月24日)
  • 「コミュニティ・ガーデン」(2021年4月14日に筆者撮影)。草花を育てる水はどこから来るのか 13)「文化」を大切にしない政治―「県域水道一体化」について 奈良県内の27市町村と県の水道事業を1つにまとめる「県域水道一体化」計画が、県の主導で進行中です。この計画の問題点を指摘したメールが浅野詠子さん(「奈良の声」記事執筆者)から届きました。(2021年4月19日)
  • 筆者のアートコレクションから出浦太郎「山I」。作者はアトリエ・ポレポレ(東京都)所属 14)地域資源としての水 「手放さない」という選択 奈良県で進行中の「県域水道一体化」計画。その核心は、参加の市町村が自前の水源を放棄し、県の水源(巨大ダム)にほぼ全面的に依存するという「垂直統合」にあります。コラムは以下の2つをめざします。(2021年5月27日)
  • 筆者の自宅、玄関さきのアマリリス。この鉢で10年以上咲き続けている。6月上旬に撮影 15)オリンピックのためのゴールデン・ルール ゴールデン・ルールとは、多くの宗教・哲学で見いだされる「他人からしてもらいたいと望むことを、他人にもしなさい」という命題のことです。キリスト教なら「新約聖書」にイエスの言葉として記されています。類似の表現は孔子「論語」にも。では、コロナ時代にふさわしいゴールデン・ルール―力をあわせて困難を克服するための命題―を考えるとしたら、何になるか。「だれもがある程度負担し、だれにも過剰な負担をさせない」はどうでしょう。(2021年6月11日)
  • 筆者のアートコレクションから大倉史子(おおくら・ふみこ、1984年生まれ)「赤いりんご/青いりんご」。作者は埼玉県在住、「川口太陽の家・工房集」所属 16)公共事業で立ち退く人たちの「納得」 公共事業を理由に住み慣れた土地からの立ち退のきを行政から求められる人たち。立ち退きはごく少数の人だけに降りかかる出来事かもしれません。しかし、すべての人が関心をもつべき問題です。立ち退く人たちの納得を大切にする行政は、ほかの施策についても信頼できる行政であると期待できそうです。(2021年7月9日)
  • 筆者のアートコレクションから武田佳子(たけだ・あつこ、1957年生まれ)「ゆかいな顔シリーズ」の1点。作者は奈良県在住、たんぽぽの家アートセンターHANA所属 17)3つに分けて差別 森喜朗氏発言 女性蔑視発言で森喜朗氏が会長職を辞した東京オリンピック・パラリンピック組織委員会。その後、女性理事が7人から19人に増員され、全理事に占める女性の割合が20%から40%に増えました。これで男女共同参画の理念にふさわしくほぼ男女同数の構成(男女平等)になった、と手放しによろこんではいけなかった。(2021年8月17日)
  • 筆者の自宅のアサガオ(2019年9月7日撮影) 18)首相に解散権はありません 菅首相が自民党総裁選不出馬・退陣を表明しました。衆議院の解散はなくなり、任期満了での総選挙となります。とはいえ、首相が解散を模索し続けたことは確かです。「首相の解散権」について考えます。(2021年9月6日)
  • 筆者のアートコレクションより藤橋貴之(ふじはし・たかし 1963年生まれ)「べネチアのゴンドラ」。作者は京都府在住、新明塾工房ソラ所属。貼り絵のように見えるのは、色が混じらない色鉛筆で描いているから。170色から選ぶ 19)「知る権利ネットワーク関西」に託す 「知る権利ネットワーク関西」は1988年に発足、情報公開制度の充実をめざして活動する団体です。情報は私たちの生活・命を支える水のようなもの。政治・行政において良質で十分な量の水が主権者である住民に届くことが必要で、そのために不可欠なのが情報公開制度の充実です。この団体の最新の活動について、代表の神野武美さんが本コラム「読者との対話」欄に文章を寄せてくれました。(2021年9月21日)
  • 筆者のアートコレクションから山野将志(やまの・まさし、1977年生まれ)「ホッキョクグマ」。作者は奈良県在住、たんぽぽの家アートセンターHANA所属。表情に動物埴輪(はにわ)をおもわせる作品 20)情報公開のルールを変える ルールの基本は公平であることです。たとえばスポーツの分野で順位を勝率によって決める場合。10試合やって、チームAは1勝0敗9引き分け、チームBは9勝1敗0引き分け、とします。1勝だけのAと9勝したBの優劣は明らかです。ところが、引き分けを除外して計算するとAは1勝0敗で10割、Bは9割。Aが上位になってしまいます。引き分けを計算に含める(引き分け1つ0.5勝0.5敗に換算する)のが公平なルールでしょう。ちなみに、日本のプロ野球は引き分けを計算に入れていません。(2021年10月17日)
  • 筆者のアートコレクションから伊藤樹里(いとう・じゅり、1977年生まれ)「大阪の路線図II」。作者は奈良県在住。大阪の地下鉄を「色」で表現した作品(赤は御堂筋線) 21)うそを放置し続ける国 近畿財務局職員の赤木俊夫さんを自殺に追い込んだ「森友学園への国有地払い下げ」問題。再調査をして真相を究明してほしいという世論の声は小さくありません。10月の臨時国会でもいくつかの野党が代表質問で問題を取りあげました。しかし、答弁した岸田首相、そして政権連立与党の幹部・有力議員の対応はきわめて消極的でした。(2021年10月29日)
  • 筆者のアートコレクションから武田佳子(たけだ・あつこ、1957年生まれ)「脱ぎ捨てて」。2006年制作の作品。モチーフは篠山紀信「宮沢りえ写真集 Santa Fe」(1991年11月刊)のなかの1枚。身体障害のある自分を意識しながら描いた。奈良県在住、たんぽぽの家アートセンターHANA(奈良市)所属 22)文化勲章受章の女性たち 11月9日に99歳で亡くなられた僧侶で作家の瀬戸内寂聴さん。2006年に文化勲章を受章しています。1937年に始まった文化勲章制度。これまでの受章者は427人(辞退4人を除く)。そのうち女性は22人です(辞退1人を除く)。今年は女性の受章者がいませんでした。ちなみに去年は2人。その数の遅々たる増え方は、どこか女性の政治参加の歩みに似ています(今回の衆議院選挙でも女性議員の数は増えなかった)。また、自然科学分野での初受章はとても遅かった。女性受章者たちを歴史的に振り返ります。(2021年11月21日)
  • 2021年4月末ごろの山の様子。地元ハイカーが撮影。「平群のメガソーラーを考える会」ブログに掲載。48ヘクタール全体がこのような状態になってしまった 23)山林地域のメガソーラーお断り 出力1000キロワット=1メガワット以上の太陽光発電をメガソーラーといいます。筆者の住む奈良県でも、平群町の山林地域で建設が進行中です。用地の広さは48ヘクタールで甲子園球場12.5個分。緑ゆたかな山林はすでに皆伐され、一帯は土色の無残な姿に。しかも深い谷の部分を建設残土で埋めている。ますます急斜面になった用地に6万枚の太陽光パネルという計画です。この土地を豪雨が襲ったら…。昨年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害(死者20人以上)を思い出すだけで十分です。広範囲の平群町住民が、大水害による生活破壊・生命の危険に直面しています。(2022年1月4日)
  • 平群町・椿台地区の住宅群。約900メートル先の地点で膨大な量の盛り土をする計画があり、土石流災害の発生が懸念されている。盛り土の方角を背に筆者撮影(2022年1月25日) 24)メガソーラー 大災害の現実味 奈良県平群町のメガソーラー。開発会社が県に提出した林地開発許可申請の書類に、防災計画が示されています。計画の基礎となるべき数値を操作していて、実にいい加減です。そのことが「平群メガソーラーを考える会」(以下、「考える会」)の資料を読むと分かります。開発を許可した県も昨年の6月に工事停止指示を出しました。(2022年1月26日)
  • 筆者のアートコレクションから西谷光世(にしたに・みつよ)「ささやく」。アトリエそれいゆ(奈良県香芝市)所属 25)メガソーラーと「公共の福祉」の危機 ごく普通の生活環境を守ることが「公共の福祉」。この観点から、山林を破壊して建設中の平群メガソーラー問題を考えます。(2022年2月25日)
  • 筆者のアートコレクションから大江正彦(おおえ・まさひこ、1965年生まれ)「ねこ」。作者は大阪市在住、アトリエひこ(大阪市平野区)所属 26)「自助の呪縛」を断つ コロナ禍のなか、困窮者支援の現場の状況を伝える新聞記事がありました(毎日新聞2021年9月24日朝刊)。生活保護の受給を勧めても「受給するくらいなら死んでしまいたい」などと拒絶する人が多くいる、世間には生活保護を受給する人たちへの拒否の感情が根強くあって、公助には頼りたくないという思いが強い、という記事でした。(2022年3月30日)
  • 筆者の家の庭に咲いたムラサキツツジ、高さ約1.4メートル(2022年4月9日撮影) 27)「時の壁」を撤去する 強制不妊手術「原告勝訴」判決によせて 旧優生保護法の下で不妊手術を強制された人たちが起こした国家賠償請求の訴訟。国家賠償法は、損害発生の時点から20年経過すると請求権は消滅するという除斥期間の規定(民法724条)を採用しています。これを厳密に適用されてしまうと、原告は全員が手術から20年以上過ぎているので、敗訴しかありません。そのような判決が全国の地方裁判所で続いてきました。越えがたい「時の壁」と言われる除斥期間20年。しかし、違憲の法律を根拠にして重大な人権侵害が意図的・積極的に推進された場合には、「時の壁」を撤去して国家賠償を認めるべきではないでしょうか。(2022年4月17日)
  • 筆者のアートコレクションから塗敦子(ぬり・あつこ、1971年生まれ)「うま」。作者は宮城県在住。社会福祉法人仙台市手をつなぐ育成会こぶし「あーとらんどくらぶ」所属) 28)「公共の福祉」を濫用してはならない 旧優生保護法に基づく強制不妊手術の推進を目的として厚生省公衆衛生局長が実務を担う都道府県に宛てた1948年10月24日付通知の文書(以下「通知」)。さすがに法律は本人の同意なしに手術できる疾病の種類を定めただけでしたが、「通知」は手術強制の容認に踏み込んでいます。公益の実現を理由にした基本的人権の侵害としては最悪なことを容認するもので、「手術は憲法の精神に背いていない」とまで明言しています。そのことを知って、筆者は以下の文言にそって憲法を解釈してほしいという思いを強くしました。「公共の福祉(公益)を濫用して、国民の基本的人権を侵害してはならない」(2022年5月21日)
  • 筆者のアートコレクションから宮下幸士(みやした・ゆきお、1973年生まれ)「無題」。作者は滋賀県在住、1997年より「やまなみ工房」(滋賀県甲賀市)で創作 29)「維持する」が政治の基本 保健所の統廃合をおこなった自治体がいくつもありました。財政赤字を削減する目的もあったのでしょう。いずれにしても、改革をめざしてのことでした。しかし、統廃合(=改革)が激烈だった自治体は、新型コロナウイルスによる人口あたり死亡者数がいちじるしく増加したと言われています。公衆衛生という仕事・施設に関して維持しなければならない大切なものを壊した結果ではないか。効率化を実現すれば仕事に支障はないと考えたのかもしれません。大切なものは持ち続ける、手放さない。政治の基本は維持すること、とは考えなかったようです。(2022年6月30日)
  • 「たんぽぽの家」(奈良市六条西3丁目)製作の厄除鬼(やくよけおに)。黒鬼が除ける厄は「愚痴」。赤鬼、青鬼など色ごとに異なる厄がある 30)3枚目の投票用紙 選挙結果がすべてか? 自民党・公明党政権が圧倒的多数の議席を保有し続ける最近の国政選挙。筆者には「ずっと投票しているけれど、政治は変わらないのか」という思いがあります。国会の活性化のためには、そろそろ与野党伯仲とか、政権交代はあったほうがいいのではないか。実際に、国会では虚偽答弁がまかり通ってきたし、憲法の規定に違反して野党の要求にもかかわらず臨時国会召集しなかったことが何回もあった。投票に関して「無力感はまったくない」と言えばウソになります。2枚の投票用紙を使った後、今回の選挙結果にがっかりした読者が(理由は筆者と異なるとしても)たくさんいると思います。無力感を根づかせないために必要なことを考えました。(2022年7月17日)
  • 筆者のアートコレクションから村山太一(むらやま・たいち、1977年生まれ)「無題」。東京都在住、アトリエ・ポレポレ所属 31)安倍政治への別れ 参議院選挙の応援演説のさなか凶弾に命を落とした安倍元首相。3度目の総理大臣就任の可能性を視野に入れながら活動していた最中でした。衝撃的な事件のあと、驚くべき事実が明らかになりました。自民党議員と統一教会の深い関係。安倍氏がほぼ一人で作り上げたものです。(2022年8月30日)
  • 金城次郎(きんじょう・じろう、1912~2004年)の鉢。沖縄県那覇市生まれ。1985年、琉球陶器で人間国宝(沖縄初)。2012年の沖縄旅行で購入、めん類の器などに使っている 32)本土にとって沖縄とは―「外地差別」を考える(最終回) 今年は沖縄の本土復帰50周年。報道で知って以来、今も忘れられない事件があります。2016年10月18日、沖縄本島北部の東村(ひがしそん)。米軍の北部訓練場(ヘリパッド)工事現場。施設の建設に抗議している人たちに対して、現地に派遣されていた大阪府警の機動隊員(公務員)が「土人」「シナ人」という差別的な呼称を投げつけた。沖縄の人を異国の人(異民族)、外地の人とみなして差別した事件です。(2022年10月11日)

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