奈良市、元議長からの購入土地、簿価6億円の10分の1以下で公売 利用ないまま金利かさむ
奈良市が1995年、市の外郭団体に購入させたJR奈良駅周辺土地区画整理事業計画地内の元市議会議長浅川清一氏(故人)の土地が、取得目的が著しく不明瞭なまま長年利用されていなかった問題で、市が同土地を簿価6億円に対し、その10分の1以下のわずか3940万円で売却していたことが分かった。
問題の市有地は、市役所と一体の特別法人・奈良市土地開発公社(解散)が大川靖則市長の時代、市議会の最高実力者と呼ばれた浅川氏から224平方メートルを約4億5500万円で買い上げた。全額を金融機関から借り入れ、市が公社から買い戻す手続きを怠ったため、金利がかさみ、公社解散直前の最終的な簿価は6億1595万50円(2012年3月末現在、市行政経営課調べ)に膨らんでいた。
市管財課は15年7月、インターネットの官公庁オークションでこの土地を売りに出し、市内の一法人のみが入札に参加し、予定価格を5円上回る金額で落札した。同課は「未利用地の利活用を今後も検討し、売却可能な市有地は売却する」としている。
闇の外郭団体と呼ばれた同公社を介した市の不透明な土地買いの痕跡は市内一円にあり、詳しい内実は市民に知らされていない。公社の解散に伴い、奈良市は地方財政法の時限立法の適用を受け、特別債173億円を発行し、20年間の期限で苦しい返済を続けている。
浅川氏の土地の単価をめぐっては、「奈良の声」の調べにより、同じ時期に同じ土地区画整理事業計画地内で公社が取得した近接土地の2倍以上だったことが判明している。明らかになった疑惑はまだある。市当局は当初、3億5840万円でこの土地を買収することを起案していた。ところが、わずか十数日の後に、買い上げる価格が1億円も跳ね上がっていた。こうした重大な金額変更が行われていたにもかかわらず、増額をした決裁の文書が存在しない。
公社の解散に当たり、仲川元庸市長が任命した外部の委員(弁護士、公認会計士ら5人)で構成する経営検討委員会は2011年、土地取得の経緯を調査した最終報告書の中で、浅川氏(報告書は「市議会議員」と匿名)の圧力があった可能性に言及し、「買い取りありきで進められた」疑い、「明らかに作為的に高額に設定された買い取り価格になっていた可能性」を指摘した。
これより7年さかのぼる04年には、市の包括外部監査人が公社に買わせたまま放置されている大量の塩漬け土地が今後、市の財政に重大な影響を与えることを警告していた。
以来、これらの塩漬け土地については、浅川氏の一件など複数の疑惑が指摘されてきたが、市議会が調査特別委員会(100条委)を開くなどして、解明に取り組むことはなかった。