奈良県)奈良市公園、閉鎖したまま20年 4億5300万円で用地買収も
入り口が施錠されて利用者のいない下三条町東街区公園で満開となった桜=2018年4月2日、奈良市下三条町
マンション建設に反対する住民の要望を受け、奈良市が1991年、風致地区や景観形成地区のいずれにも該当しない同市下三条町の民有地1051平方メートルを4億5300万円で買い上げた後、造成した公園が放火事件を機に閉鎖され、20年近くたった今も利用されないままになっている。市の関与がなければ、固定資産税などの税収が入っていた一般の土地であり、財政が受けた損害は大きいといえそうだ。
公園は下三条町東街区公園。記者は7年前にも取材しているが、現在も状況は変わっていなかった。
公園開設は94年。落書きのいたずらがあったり、たき火や薬物の使用が目撃されたりしたため、地元自治会の要望を受けて市は97年、入り口を施錠した。2年後の99年にいったん開放するが、この年、遊具に放火され、隣接する民家の塀の一部が焼ける事件が発生し、市は再び自治会の要望を受けて施錠した。以来、一度も公園として利用されたことがない。
この間、市は県にも相談した。道路などに転用するか、近隣に新たな公園を設けるなどしない限り、普通財産として売却処分することは都市公園法上、難しいという。
最近は開放求める声も
最近は、「開放すべきでは」という市民の声が市役所に来るようになった。しかし、市は近隣の5つの自治会などがすべて了解するまでは、解錠しない方針だ。
公園の中には防火水槽がある。市公園緑地課は「公園の鍵は消防署も持っており、施錠していても問題はない。本来は施錠を外し、開くべきものという認識はある」と話している。
同公園の土地は市が直接取得したが、西田栄三、大川靖則の2市長時代の90年代、市外郭団体の土地開発公社(13年3月解散)が取得した土地は買い値の総額で約400億円に上り、市内一円にある。利用に至らなかった土地が大半を占め、市の財政が悪化する一因になった。