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地域の埋もれた問題に光を当てる取材と報道


2026年1月17日第2回「奈良の声」読者会のお知らせ

浅野善一

万博・奈良県催事のソファ廃棄問題 購入費用、受託事業者が負担 県に請求せず

昨年5月の「オール・ナラ・フェスティバル」で会場のエキスポアリーナの人工芝の上に置かれたソファと利用する人たち=ユーチューブ「奈良県公式総合チャンネル」から

昨年5月の「オール・ナラ・フェスティバル」で会場のエキスポアリーナの人工芝の上に置かれたソファと利用する人たち=ユーチューブ「奈良県公式総合チャンネル」から

 昨年5月、大阪・関西万博奈良県催事会場のソファ50個が催しの3日間だけ使用して廃棄された問題で、同万博県実行委員会(会長・山下真知事)はソファの購入費用について、催事の受託事業者に負担を求めることを決めた。事業者もこれを受け入れ、実行委員会に請求しないことにした。1月7日、県への取材で分かった。ソファは実行委員会の所有だったが、事業者の判断で廃棄された。「奈良の声」の取材がきっかけで問題が明るみになった。

 県実行委員会は県や市町村などで構成され、県催事は博報堂関西支社を代表企業とする共同企業体に委託された。催事は「エキスポアリーナ」で開かれた「オール・ナラ・フェスティバル」で、共同企業体は来場者用にソファを購入して会場に設置したが、催し終了後、「クリーニングをしても衛生面での不安が残る」として廃棄した。

 県が廃棄を知ったのは昨年7月、「奈良の声」からの「ソファが催し終了後、廃棄されたとの情報がある」との取材を受けた後。県は共同企業体側に問い合わせて廃棄を把握した。「奈良の声」の報道後、問題は同年9月の県議会定例会でも取り上げられた。

 県万博推進室から事務を引き継いだ県政策推進課によると、問題を受けて県は共同企業体側と対応を協議。同時に県の顧問弁護士にも法律相談を行った結果、共同企業体から実行委員会に催事の受託料を請求してもらう際に、廃棄されたソファの相当額を減額してもらうのが妥当との結論に至ったという。共同企業体側も受け入れた。

 実行委員会から共同企業体に県催事を委託するに当たっての2025年度分の契約額は約1億7626万円となっていたが、実行委員会から支払いを受けるに当たって、共同企業体側はソファの購入費用114万9500円を差し引いた金額で請求する。ソファは「ヨギボー」の商品名で販売されているビーズソファで、共同企業体側からの提示で、1個当たりの価格を「通常販売価格」の2万2990円(販売会社がホームページで公開している金額、税込み)として計算したといい、県もこれを了承した。

 委託契約期限の昨年12月末に共同企業体から県に請求の根拠となる実績報告書が提出された。この際に減額についても確認したという。県は問題発覚以降、委託料を清算する際にこの問題をどのように扱うかについて協議していた。

 「奈良の声」がこの問題を取材するきっかけとなった情報を寄せたのは奈良市内のイベントプロダクション代表の男性(69)。男性は県催事に実行委員会が募集したボランティアとして参加していた。男性は「奈良の声」に対し「会場で運営スタッフから『ソファは催しの終了後、廃棄される』と聞いた」と話していた。

 男性は取材に対し「ソファが廃棄された分について、県民の税金が無駄にならなくて良かった。この分をボランティアの弁当代や交通費(2000円分のクオカードは交付)として渡せたかもしれない。万博は『SDGs達成への貢献』が前提だったが、業者はソファをいきなり廃棄してしまった。今後は業者とのコミュニケーションを密にして無駄な税金を使わないようにしてほしい」と述べた。

 「奈良の声」は1月7日、博報堂広報室に対しても電子メールでコメントを依頼したが、同日夜の時点で返信はない。

 「オール・ナラ・フェスティバル」では県内の伝統文化や食文化を紹介する舞台発表やブースの開設があり、3日間で計約5万2000人の来場があった。このほか9月の県催事では「オール・ナラ・ハーモニー」と題して、県を拠点に映画を制作する河瀨直美さんが携わったパビリオンの公開などがあった。

筆者情報

万博・奈良県催事のソファ廃棄問題 受託事業者に負担求める可能性 県、委託料清算に向け協議

奈良県庁=奈良市登大路町、浅野善一撮影

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