奈良市監査委員の住民監査請求審議、意見一不致の場合、監査結果に各見解を付記 合議不調の中身、分かりやすく
委員の意見が一致せず、奈良市監査委員としての判断を示すに至らなかった監査結果に付記された各見解(蛍光ペンによる強調は記者が行った)
奈良市監査委員がここ最近、市民から受けた住民監査請求に対し、請求を認めるか否かで委員の意見が一致せず、市監査委員としての判断を示すに至らなかった場合(合議不調)にも、どのように意見が分かれたのかを明らかにするようになっている。請求者は、自身の請求について委員がどのように考えてくれたのかを知ることができる。
住民監査請求の監査結果は、請求者に通知され、公表もされる。同市土地開発公社の市西ふれあい広場予定地取得を巡る住民監査請求で、2013年5月に公表された監査結果は「合議に至らず監査結果を出せない」と素っ気ないもので、審議の過程でどのような意見が出たのかは明らかにされなかった。
「奈良の声」は2014年7月12日付の記事「奈良市西ふれあい広場住民監査請求の合議不調 未公表の委員意見、確認不能 内容残しておらず」【記事へ】で、この点を指摘。監査委員の説明責任について問うていた。
奈良市がホームページで公開している監査結果によると、合議不調で委員の意見が明らかにされた一番新しい例は、市の火葬場建設予定地の買収額の高などを巡る2019年2月の住民監査請求。監査結果には、違法または不当な公金の支出には当たらないとして「請求に理由がないとする」立場の委員の「見解」と、裁量権を逸脱、乱用した違法なものなどとして「請求の一部に理由があるとする」立場の委員の「見解」が付記された。
同市監査委員の現在の構成は、東口喜代一代表監査委員はじめ弁護士や市議会選出の議員ら計4人。市監査委員事務局の櫻井元子事務局長によると、西ふれあい広場を巡る住民監査請求の後、合議不調となった住民監査請求は3件あるが、いずれも委員の見解が付記された。見解を付記するかどうかは、その都度、委員が協議して決めている。
各見解がいずれの委員のものであるかは明らかにしていない。内容などを勘案してその都度、委員が決めており、現段階では意見のみを付記する形になっているという。審議過程の議事録は、委員から指示がないため作成していないという。「奈良の声」のこれまでの取材では、全国的には要点筆記の形で作成している例もある。
地方自治法では、住民監査請求に基づく監査や勧告についての決定は、監査委員の合議によるとしている。このため、請求を認めるにしても棄却するにしても、委員の意見一致が前提。ただ、同法や奈良市監査委員条例、関連規程に、合議不調の場合に委員の見解の付記を義務付ける規定はなく、全国の自治体でも付記するかどうか、その対応はさまざま。
県内では奈良市のほか、御所市監査委員が合議不調の場合に見解を付記している事例を、同市のホームページで確認できる。2011年と2012年に1件ずつあった。一方、生駒市では、市監査委員事務局によると、2009年と2010年に合議不調となった事例が1件ずつあった。市のホームページで監査結果を公開しているが、どのような意見があったかは明らかにされていない。