奈良県域水道一体化で内部留保、吸い取られる? 大和郡山市水道事業、うち28億円一般会計に移し自衛
地下水を利用している奈良県大和郡山市の市営水道水=2020年6月15日、同市内
県域水道一体化に参加すれば廃止される大和郡山市営の地下水浄水場=同市植槻町
奈良県が進める県域水道一体化の動きをにらんで、大和郡山市は市営水道の浄水場の更新のために積み立ててきた利益剰余金28億円を、一般会計に繰り入れる議案を開会中の市議会6月定例会に提案した。24日の採決で可決される公算だ。
市の水道事業は、内部留保が81億円余という近畿でも屈指の良好な経営状態と、県内有数の低廉な水道料金を維持している。県水一体化に参加すれば、水道資産のすべてを引き渡すことになる。自衛手段として、施設改良のための積立金を水道会計から一般会計に移動する。
県の一体化プランは、巨大な水がめ大滝ダム(奈良県川上村)の水を主水源に、県内市町村の地下水浄水場などを廃し、奈良盆地の市町村を中心に企業団方式による水道事業一本化を図る。5年後の開業を目指す。企業団は参加市町村の水道資産を引き継ぐ方針。
これにより、水道事業会計の負債が大きい自治体は得をするが、利益の余剰を積み立ててきた自治体住民にとっては、吸い取られるとの不公平感をもたらす。
15日に再開した定例会本会議で、丸谷利一議員(維新)が取り上げ、「防災上、多元的に水源を残した方が良いという市民の声もある。28億円を繰り入れた後、残る50億円余の内部留保資金はどうするのか」とただした。
「一体化不参加の場合は戻す」と市は答弁
市上下水道部の上田亮部長が答弁し、「県水一体化に不参加となった場合は、この28億円を再び水道会計に戻す」と方針を述べた。
同水道部によると、県水一体化に参加するかどうかの目安として、水道料金の動向や市の水道資産の行方を注視していく。地下水が比較的地震に強いことは認識しているという。市の水道の水は現在、自前の地下水と県営水道(大滝ダム)の水が50%ずつ。市営の浄水場は2カ所あり、うち北郡山浄水場には生物接触ろ過施設がある。
上田清市長は「本市の水道事業は抜きん出て良好な経営状況にある。自己水(地下水)をどうするのか、防災面の課題などを研究し、市民が納得する方向を示したい」と答弁した。【関連記事へ】