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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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ジャーナリスト浅野詠子

水道料金や内部留保の行方、提示まだ 奈良・県域水道一体化 「国交付金有利に」市町村協議急ぐも

県域水道一体化の主水源になる大滝ダムの貯水池=奈良県川上村

県域水道一体化の主水源になる大滝ダムの貯水池=奈良県川上村

 奈良県が県域水道一体化事業の開始目標年を2025年度と設定し、市町村との協議を急いでいる理由は、同年度が国の交付金を有利に受給できるぎりぎりの年度と踏んでいるからだ。一方で、市町村営水道の料金格差や、良好な水道事業経営をしてきた市町村の内部留保は一体化後、どうなるのか、疑問を抱く県民や市町村の議員に対し、県は方向を示せていない。

 県が取得したいのは、厚生労働省が窓口となる「生活基盤施設耐震化等交付金」。奈良県川上村の大滝ダムを主水源とする水道広域化は、地下水やため池などを水源とする県内市町村営水道の約10カ所の浄水場を廃止して、3つの浄水場に統合。交付金は、新たな配管を敷設する共同化工事などに充てることができる。

 交付金は、2018年末の水道法改正により、水道事業広域連携の推進を図ろうとする国の政策的補助金の性格を持つ。

 企業団方式となる水道広域化工事の発注額は未定だが、国は事業費の3分の1を補助する。時限的な交付金であり、厚労省は2034年度までの10年間、自治体の水道広域化事業に対し交付する。

 一方、水道の消費者である多くの県民がいまだ県域一体化をイメージできない。市町村営水道の料金の格差にはどう対処するのか、良好な経営をしてきた市町村の内部留保は吸い取られてしまうのか、逆に借金(企業債)の多い市町村は得をするのか。県民や市町村議員らが抱く疑問に対し、県はまだ方向を示していない。

 県水道局業務課は「交付金を有効に受給するためには、令和7(2025)年度がタイムリミット。県域水道一体化の母体となる企業団の設立は早ければ早いほど、有利な交付金が得られる」と話す。

 経営状態が特に良好な大和郡山市は、水道資産の一部28億円を一般会計に移す条例案を開会中の6月定例市議会に提案した。一体化に参加した場合に、資産のすべてを引き渡すことを避けるためだ。18日の市議会建設水道委員会では、巨大ダムに依存する県営水道の単価が1立方メートル当たり130円なのに対し、地下水を水源とする市営昭和浄水場の耐震化整備後の同単価は90円にとどまることを、市は明らかにした。

 向こう10年を見通した同市の水道ビジョン策定は2017年3月。渇水時にも安定供給が可能な水源として、地下水の継続利用を打ち出していた。ところが7カ月後、県域水道一体化の方針が打ち出された。「突然のことだった」と、市の水道担当者は同建設水道委員会で当時の心境を吐露した。改正水道法をにらみ、合理化に向けて県は舵を大きく切ったのだ。

 大和郡山市内で農業を営む男性は、農業用水の吉野川分水(大迫ダム、津風呂ダム)を例に挙げて「太い導水管から奈良盆地に潤沢な水が流れてくるが、余剰はないのか、水の循環は分からないことばかりです」と話す。【関連記事へ】

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