沖縄・百按司墓遺骨返還訴訟の弁護団長丹羽さんが来県し講演 「先住民の自己決定に委ねるべき」と訴え
先住民族の権利の視点で遺骨返還訴訟の大事さを語る丹羽雅雄さん=2021年12月19日、奈良市大安寺1丁目の県人権センター
百按司墓(今帰仁村教育委員会報告書から)
昭和の初め、京都帝国大学の研究者が学術研究の名目で沖縄県今帰仁村の「百按司(ももじゃな)墓」(現在、同村指定文化財)から収集し、京都大学総合博物館(京都市左京区吉田本町)に保管されている遺骨26体の返還を求め、同墓の祭祀(さいし)を承継する琉球王族子孫らが2018年、京都地裁に提起した訴訟の原告側弁護団長、弁護士の丹羽雅雄さんが19日、奈良市大安寺1丁目の県人権センターで開催の「植民地主義に抗(あらが)う沖縄と連帯する奈良県集会」で講演。国連が重んじる先住民族の権利や、裁判で問いかける脱植民主義や国際人権の潮流を踏まえて話した。
遺骨26体の存在は、今帰仁村教育委員会が2004年に行った百按司墓の木棺修復作業(委託先、元興寺文化財研究所)によって知られるようになった。京大に対し、前代議士の照屋寛徳さんが遺骨情報の開示を請求したところ門前払いとなり、訴訟に発展。遺族に無断で遺骨を収集していたのは京都帝大医学部の研究者2人で、1929年1月と1933年12月に、それぞれ別個に相当数を持ち去っていた。
京大側は、「沖縄県庁と沖縄県警を通して人骨を収集した」と正当性を主張。これに対し丹羽さんは、背景には明治政府による「国内植民地支配」があり、その下で起きた強奪に当たると解説し「大地は、先住民の自己決定に委ねられるべきものである」と訴えた。
裁判は来年1月に結審する。この日の集いを主催した「琉球人遺骨返還を求める奈良県会議」共同代表で、沖縄県北中城村出身の奈良市民、崎浜盛喜さん(74)は今年10月の第11回口頭弁論を傍聴し、その後の集会で「ヤマトの裁判官や被告らが骨神を拝むウチナー(沖縄)の祖霊神信仰を簡単に理解できるはずはない」と痛恨の思いを語っている。
一方、丹羽さんの話に熱心に耳を傾けた約80人を前に崎浜さんは、今年7月の奈良県議会(荻田義雄議長)の意見書(名護市の辺野古新基地建設の埋め立て等に沖縄戦戦没者の遺骨等を使用しないよう政府に求める意見書)の採択は「全国に先駆けた画期的なこと」と報告し、百按司墓への祖霊帰還実現に連なる市民運動の広がりに希望を託した。前代議士の屋良朝博さん(元沖縄タイムス論説委員)も駆け付け「辺野古を止める! 沖縄と安全保障」と題しスピーチした。 関連記事へ