奈良県町村会が自民党本部に候補一本化要望 知事選巡り今年1月、正副会長ら東京出張
奈良県町村会の事務局がある県市町村会館=2023年3月15日、橿原市
自民党系の現職と新人が立候補し、保守分裂となった4月9日の奈良県知事選を巡り、県町村会の正副会長ら4人の町村長が選挙前の今年1月30日、「県選出国会議員、省庁などへの要望」を用務として東京に出張し、同党本部に候補一本化の調整を要望していたことが、「奈良の声」の町村会への開示請求などから分かった。
知事選は3月23日に告示され6人が立候補、自民党の分裂が影響して日本維新の会公認の新人、山下真氏が当選した。
県内の自民党関係者によると、党県連は現職の荒井正吾氏と新人の平木省氏のうち、平木氏の推薦を決めたが、党としての推薦には至っていなかった。町村会で一本化に期待した首長はほぼ平木氏支持だったとみられるが、一方で荒井氏支持の首長もいて、町村会が一本化でまとまっていたわけではなかった。
県町村会は県内27町村で構成され、主な活動は町村に共通する課題の解決ための県や省庁、国会議員への要望活動、町村のPR、町村の災害共催事業など。運営費は各町村から集める会費で賄われている。町村会が選挙に関わって特定の政党に候補の一本化を要望するのは異例。
東京に出張したのは会長の車谷重高・天川村長のほか、副会長の広陵町長、理事の山添、下北山両村長。町村会が「奈良の声」に開示したのは出張うかがい、出張命令簿、支出負担行為うかがい兼支出命令書など。出張命令簿は用務について「県選出国会議員、省庁等への要望」と記しているだけで特定の要望はなかった。誰に何を要望したのか分かる文書も存在しなかった。
旅費は交通費、日当、日帰りが困難な一部県南部の村長の宿泊費など4人合わせて約17万円だった。
町村会は県市長会の情報公開要綱を準用、文書の開示請求に応じている。
車谷会長は3月27日、取材に対し、町村会の3分の2ぐらいが自民党本部の調整に期待していたとし、「(分裂に対し)どう対応したらいいか町村も悩んでいた。“会長が行ってくれたらどうか”との委任を受け、町村会として一本化への調整を求める文書を持っていった。どちらを推薦しろという要望ではない。全体的に見たら公務といってよい」と説明した。
加えて「これまでと同じような県政の流れをつくっていくのなら一本化が必要」と述べ、同時に世代交代の必要性も口にした。
一方、出張の用務としていた国会議員や省庁への要望については「訪問相手が留守だったりしたが、夕方には会うことができた議員もいる」と述べた。
1月30日の自民党本部への要望は、町村会だけでなく天理市長らも参加して行われた。
これに先立つ1月18日には、荒井氏を支持する桜井、御所、五條の3市長と田原本町長の4人も自民党本部を訪れていた。関係者によると「県連の平木氏推薦決定に対し、荒井氏支援の首長も一定数いることを伝えた」という。
「奈良の声」は町村会だけでなく、これら市長、町長についても自民党本部への訪問当日の日程をそれぞれの秘書課などに確認した。天理、桜井、御所、五條の4市長は、省庁への要望活動など公務も日程に入っていた。
住民以外でも開示請求が可能な天理、桜井、御所には出張に関する文書を請求。種類は一様ではなかったが、要望先や要望内容が分かる出張命令簿や出張うかがい、復命書、陳情書、提出資料などがあった。一方、田原本町長は自費で訪れていた。
天理市の並河健市長は2月27日、出張の際の政治活動について「私は安倍元総理の国葬は自費で出席した。ケースバイケースで、公務にしっかりとした中身があれば、公務の合間に入れることは(首長のような)特別職には許容される」と話した。 関連記事へ