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地域の埋もれた問題に光を当てる取材と報道


浅野善一

横断歩道横にコインパーキング出入り口 奈良県大和郡山 法解釈、市町村に余地 安全確保が不確実に

横断歩道の横にあるコインパーキングの出入り口=2024年7月31日、奈良県大和郡山市南郡山町(車のナンバープレートをぼかしています)

横断歩道の横にあるコインパーキングの出入り口=2024年7月31日、奈良県大和郡山市南郡山町(車のナンバープレートをぼかしています)

 奈良県大和郡山市南郡山町の近鉄郡山駅前に開業したコインパーキングは、車の出入り口が横断歩道の横にある。一定の規模を超えるコインパーキングは横断歩道付近に出入り口を設置できない。「奈良の声」が取材を申し入れると、不動産会社(橿原市)は規模を縮小した。駐車場法はコインパーキングの規模の基になる駐車ますの寸法について市町村による解釈の余地があり、それが安全の確保を不確実なものにした。

 同パーキングはバスターミナルがある駅前ロータリーに面している。閉鎖された銀行支店のビルを撤去した跡地に設けられた。敷地の広さは、地図上で計測すると約1300平方メートル。

 横断歩道はパーキングが面している一方通行の道路にある。幅、長さはいずれも4メートルほど。問題の出入り口は横断歩道の端に接する位置に設けられている。銀行支店当時も敷地内に10台程度のコインパーキングがあり、その当時も同じ場所に出入り口があった。

 コインパーキングを開業する場合、駐車場法は「駐車の用に供する部分の面積」(1台ごとの駐車ますの合計面積)が500平方メートル以上あるものについて、あらかじめ市町村に届け出ることを義務付けているほか、同法施行令が定める「構造および設備の基準」が適用されることを定めている。この基準の中に、横断歩道から5メートル以内に出入り口を設けてはならないとの規定がある。

 大和郡山市まちづくり戦略課によると、同パーキングに関して届け出はなかった。同課は「奈良の声」の取材に対し「駐車部分の面積は500平方メートル未満で、届け出の必要はないと判断している」とした。市が独自に現地で面積を計測した結果という。このため出入り口の設置場所の問題も「確認の必要はない」とする。

 記者が当初に現地で確認したところ、同パーキングの駐車台数は44台。うち6台は地面に「軽」の表示があることから軽自動車用とみられる。駐車ますは白線で区画されているが、白線があるのは車の左右のみで車の前後にはない。幅については一般車用が2.5メートル、軽自動車用が2.3メートルと分かる。一方、奥行きについては左右の白線は車の先頭から車止めまでで、車止めより後方のトランク部分には及んでいない。

 同課は、白線のある車止めまでを奥行きと捉えたという。そうすると奥行きは一般車用が4メートル、軽自動車用が3メートル。これに基づいて駐車ますの合計面積を計算すると421.4平方メートル。法が定める500平方メートルを下回る。

 しかし、これには車のトランク部分の面積は含まれていないことになる。車止めの後方には少なくとも1メートルの空間があるが、同課は「実際の白線より奥行きを大きくする根拠はない」とした。

 駐車場法は駐車ますの寸法を定めておらず、国土交通省街路交通施設課は取材に対し「届け出先の自治体の判断」とする。このため市町村の中には道路構造令解説を参考にしているところもあり、隣の奈良市は基本的な寸法を「幅2.5メートル以上、奥行き5メートル以上」と定めている。同市都市計画課は「決まりがあった方が説明しやすい」とする。一方、大和郡山市まちづくり戦略課は寸法を「定めていない」とした。

 道路構造令は道路の安全性確保について最低限の技術的基準を定めたもので、その解説書は小型車の駐車ますの標準寸法を幅2.3メートル、奥行き5メートルと定めている。軽自動車は同解説にないため、旧建設省の駐車場設計・施工指針を参考にすると幅2メートル、奥行き3.6メートル。トランク部分を含め車全体が収まる大きさになる。「奈良の声」がこれらの奥行きを基に同パーキングの駐車ますの合計面積を計算したところ524.68平方メートルとなった。

 国土交通省街路交通施設課によると、駐車場法が駐車場の規模を台数でなく面積で定めているのは、駐車場を建築物と考えているためで、500平方メートル以上になると広く公共的に使われる程度が高くなり、出入り口や車路について基準を設定しておく必要があるとした。

 「奈良の声」は6月20日、不動産会社に対し同社ホームページの問い合わせフォームから取材を申し入れた。申し入れに当たっては、取材で明らかになった点を示して、パーキングは大和郡山市への届け出が必要な規模があるのではないか▽パーキングの出入り口が横断歩道から5メートル以内にあるが安全上の問題はないか―を質問内容とした。電話でも担当者に取材の希望を伝えた。

 7月31日時点で返答はない。一方で「奈良の声」はこの日までに、同パーキングの駐車台数が3台分(うち2台は軽自動車用)減っていることを確認した。台数分の駐車ますの白線が消され、車止めが撤去されていた。計算上、面積は500平方メートルを下回るものとみられる。

 大和郡山市まちづくり戦略課に対し、この間、不動産会社から相談があったか尋ねた。同課は「個別の案件なので、あったかどうかは答えられない。仮にあったとしても、パーキングは当初から届け出が必要な面積を満たしていないので、市が不動産会社に駐車台数を減らすよう指導することはあり得ない」と話した。

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