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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

住民監査請求を棄却 仕組債の損失、損害と認めず 奈良県市町村総合事務組合監査委員

奈良県市町村総合事務組合監査委員

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2012年12月22日 浅野善一

 奈良県市町村総合事務組合の仕組債20億円損失問題で、記者は22日までに、同組合監査委員に住民監査請求を行った。同問題は、地方公共団体の現金の確実な保管を義務づけた地方自治法などに違反すると指摘し、管理者の小城利重・斑鳩町長ら関係職員に対する損害賠償の勧告などを求めた。組合はことし6月に「奈良の声」による記事掲載で問題が表面化して以降、一度も経緯について自ら公表するなどしておらず、説明責任を果たしていない。

 記者は同組合を組織する市町村の一つ、奈良市の住民。請求では次のように訴えた。

 小城管理者や前管理者の吉田誠克・大和高田市長ら関係職員は2011年3月から12月にかけ、退職手当基金で保有する仕組債13銘柄取得額55億100万円分を34億3510万円で売却した。退職手当資金の不足から仕組債の換金が必要になったためで、いずれも満期前の売却だった。

 損害は、仕組債の取得額と売却額の差額20億6590万。仕組債は投機性が指摘されており、加えて満期前に売却すると大きく元本割れする恐れがある。仕組債の元本保証は満期保有が前提である。地方自治法や地方財政法は、地方公共団体の現金や基金の保管、運用について、確実な方法で行わなければならないとしており、これは、元本が保証されていることと解釈されている。組合も基金条例で同様の規定をしている。

 退職手当資金の不足は売却、損害の言い訳にならない。仕組債の取得について満期保有目的としながら、実際は早期償還を当てにした運用だった。資金不足による基金取り崩しが予測されているのに、満期が20―30年と長い仕組債を買っている。早期償還は、為替相場や長短金利の動向といった要素に連動して決まる不確実なもの。事実、当ては外れ、保有が長期化した。

 こうした事情に照らし、仕組債の売却による差損は両法と同条例に違反している。

 請求では、小城管理者ら関係職員に対する損害賠償請求を怠っている組合への是正の勧告も求めた。

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