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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

奈良県奈良市 疑惑の土地買収のツケ、三セク債発行額が全国市町村で最大級

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2013年3月27日 浅野詠子

 地方公社や公営企業の解散、廃止などの整理に充てる借金「第三セクター等改革推進債」について、総務省は29日にも2012年度・第2次分を公表するが、奈良県奈良市の発行額約190億円は政令市を除く全国の市町村の中で最大級であることが分かった。

 同省によると、同推進債の制度ができた09年度以来、政令市を除く市町村の公社解散や病院事業廃止などで65件の発行が許可された。うち半数は、発行額が数億円から20億円台にとどまる。土地開発公社の解散に伴う発行額が多いのは、奈良市(175億円)と新潟県上越市(174億円)。奈良市はこれに加え、宅地造成事業費特別会計(廃止)の14億5580万円の発行があり、合わせると190億円近くになる。

 この宅地造成会計は公共事業の代替地造成などが目的だが、「第2の土地開発公社」ともいわれ、奈良市は同市石木町などで必要性の極めて乏しい山林を高値で買収している。売ったのは、市議会で大御所と呼ばれた元議長(故人)だった。元議長は土地開発公社にも必要性が疑わしい土地を高値で買わせている。

 市は大川靖則市長の時代に、市民の目の届きにくい土地開発公社を舞台として、大量の無駄な土地を買収した。これにより、その代金に充てた市中の銀行からの多額な借入金が残された。放置すると金利負担が累増するため市は、第三セクター等改革推進債を利用して20年で返済する。疑惑が持たれる土地買収の付けは市民の負担となった。

 市土地開発公社経営検討委員会(委員長・出水順弁護士)は2011年3月、公社保有地のうち5カ所について取得の経緯を調査した報告書を公表した。議員や団体などを介して市への圧力がかかっていた疑いや、作為的な高値の取引があった疑いなどを具体的に指摘した。それ以前の03、07年にも市の包括外部監査人が詳細なデータを基に公社問題について警告を発している。しかし、これまでのところ市議会の反応は鈍く、100条委などの特別委員会は開かれていない。

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