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奈良県内市町村の情報公開条例、加入事務組合に開示協力求める規定ゼロ奈良県内の市町村の情報公開条例で、ごみ処理など行政の一部を共同で行う一部事務組合や広域連合が保有する情報の開示請求に対し、加入している組合や連合に情報の提供を求めなければならないとする努力義務規定を設けているものはゼロであることが、「奈良の声」の調べで分かった。特別地方公共団体であるこうした組合や連合は本来、自ら情報公開条例を制定すべきだが、県内の団体の制定率は3割にとどまっている。残る7割の団体は、住民の目を完全に遮断した状態だ。 県内の一部事務組合と広域連合は橿原・高市広域行政事務組合など計33団体。このうち、情報公開条例または同種の要項を制定しているのは山辺広域行政事務組合(消防など)など11団体(昨年3月、「奈良の声」調べ)。奈良市など県内全39市町村はいずれも複数の組合または連合に加入している(広域連合・一部事務組合の一覧、2012年3月1日現在、県のまとめ)。 全国では、福岡県や東京都などの市町村がこうした規定を設けている。福岡市情報公開条例は、「市が加入する地方公共団体の組合(一部事務組合、広域連合)に対し、この条例の趣旨にのっとり、その保有する情報を公開するよう協力を要請するものとする 」としている。2002年3月の条例の全面改正で盛り込まれた。 当時の福岡市情報公開審査会の答申は理由について、「その事業の経費が構成団体の負担によって支えられる点に鑑みると、地方公共団体の組合の行う事務事業に関しても情報公開を推進し、市民に対する説明責任を果たす必要性は否定できない」「地方公共団体の組合が情報公開制度を設けるまでは、本市が構成団体となる地方公共団体の組合に対して、その保有する情報を公開するよう協力を要請する旨を条例上明記することが適当」と説明した。 福岡市情報公開室は取材に対し、同規定に基づいた開示請求はこれまでのところないとした。市が加入している組合のほとんどが条例を制定しているためという。また、東京都日野市は取材に対し、「一部事務組合側が情報を出すかどうか判断は分からないが、市の条例に努力義務規定を設けている」(総務課)とした。 記者は、奈良県内の各市町村がホームページで公開している情報公開条例を閲覧し、規定の有無を確認した。このうち一部の市町村にはさらに直接、電話による確認もした。また、ホームページで条例を公開していない吉野郡の村に対しては電話で直接、確認した。 静香苑環境施設組合(火葬場)など10団体に加入している王寺町は、「組合が保有する情報は町の情報公開条例の対象外。組合に条例があれば、そちらに請求してもらうことになる」(総務課)とした。こうした規定については、設置を求める要望を聞いたことはなく、検討の予定もないとした。 一部事務組合などの情報公開の遅れがもたらす弊害としては、昨年表面化した奈良県市町村総合事務組合の仕組債損失問題を例に挙げることができる。加入している市町村の負担金が原資の退職手当基金で買った仕組債を売却して、20億円の元本割れが生じたにもかかわらず、組合事務局は「奈良の声」の取材に対し、組合が情報公開条例を制定していないことを理由に当初、元本割れの有無さえ明らかにしなかった。 市民団体の市民オンブズマン福岡は、福岡市の情報公開条例の全面改正時に一部事務組合への開示協力要請の規定を盛り込むよう提言した。児嶋研二・代表幹事は取材に対し、「県内の一部事務組合を舞台に起きた不祥事がきっかけになっている」とした。 同オンブズマンの一部事務組合情報公開条例モデル案の策定に関わった斉藤文男・九州大学大学名誉教授(憲法、行政法)は「一部事務組合はブラックボックス。組合には他の地方公共団体も入っていて、個別の市町村の情報公開条例の実施機関にできない。組合が独自に条例を作るのが大変なら、構成する市町村の条例を準用する、との一文をもって条例を作る方法もある」とした。 |
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