遷都1300年記念事業で制作のデジタル情報、4年経てようやく公開 県立図書情報館HPで
奈良県立図書情報館のホームページ上で公開されている「2010年の奈良の実景」のトップページの一部
奈良県が平城遷都1300年記念事業の弥勒プロジェクトの一環で2010年度に制作したデジタル情報「2010年の奈良」が未公開のままとなっていた問題で、同情報が県立図書情報館のホームページ上で公開されていたことが分かった。当初は同プロジェクトで開設された独自のサイトで公開する予定だったが、同サイトが短期間で閉鎖されたため、県は新たな活用方法を検討していた。
図書情報館ホームページのコーナー「まほろばデジタルライブラリー」で2015年3月1日、「2010年の奈良の実景」として公開された。制作から4年が経過していた。県国際課によると、公開に当たって広報は行わなかったという。
「2010年の奈良」は、1300年祭が開かれた年の県内の実景を記録化したもの。自然や寺社の風景、文物、催事など約1000項目について撮影したデジタル写真1万点と項目ごとの解説から成る。
当初の計画では、日本と東アジアの未来を考えることを目的として県が09年度末に開設したポータルサイト「NARASYS(ナラシス)ネットワーク・スタジオ」の中で公開する予定だった。同サイトは電子会議室とウィキペディア型のアーカイブで構成されていたが、開設の事実やアドレスの公表に至らないまま11年度末、2年で閉鎖された。
県国際課は、公開場所として図書情報館のホームページを選んだ理由について「県の歴史と文化の伝承と創造の発信メディアであり、平城遷都1300年の節目に集積した自然や寺社など奈良の姿を将来にわたり記録保存し、有効活用していくのに最適と判断した。新たな活用が図れるものと考えている」と説明した。
写真は9000点が生かされず
図書情報館の「2010年の奈良の実景」は五十音順の索引で各項目を閲覧できる。公開に当たっては、1項目に写真1点とした。このため、写真1万点のうち9000点は生かされなかった。
写真の利用が一部にとどまったことについて、同課は「ツイッターやフェイスブックなどSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の発達なども総合的に考慮し、閲覧者にとっての視点や保守管理上のコストなどを勘案して、公開するフォーマットや写真素材、写真点数、解説文を決定した」とした。
県は1300年記念事業当時、同サイトの設計や運用の外部委託で1769万円を支出。「2010年の奈良」制作の外部委託で、同記念事業式典で上映されたイメージ映像の制作費も含んだ額になるが、5998万円を支出していた。