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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

奈良県)県営住宅 生活保護利用者など対象の連帯保証人免除の条件 「2親等内の親族いない者」は福祉の視点不足

県営住宅条例の連帯保証人免除規定の対象者
対象者 条件
生活保護受給者 2親等内の親族がいない者
家賃の代理納付
DV被害者 2親等内の親族がいない者
身体、精神、知的の各障害者 2親等内の親族がいない者
65歳以上の高齢者 2親等内の親族がいない者
災害被害者
2親等内の範囲(県住まいまちづくり課の説明による)
本人の父母、祖父母、子とその配偶者、孫とその配偶者、兄弟姉妹とその配偶者、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹とその配偶者

 【視点】奈良県が2018年3月、県営住宅条例を改正し、入居を希望する生活保護の利用者やDV(配偶者からの暴力)被害者、障害者、高齢者などを対象に、連帯保証人の免除を可能にしたものの、「2親等内の親族がいない者」との条件を設けている問題。親族がいても連帯保証人を引き受けてもらえないケースもあり、条例改正の趣旨が十分に生かされない恐れがある。県住まいまちづくり課の担当者は、「奈良の声」の取材に対し、福祉の視点を踏まえたいっそうの検討の必要性に言及した。

 県営住宅は、県が住宅に困窮する低所得者に対して低廉な家賃で入居させるため設置する住宅。条例改正では、入居時の要件となっている連帯保証人について、「特別な事情があると認める場合は、連帯保証人を定めないことができる」などとする規定を追加し、要綱で対象者を定めた。

 対象者は、生活保護受給者、DV被害者、障害者(身体障害、精神障害、知的障害)、65歳以上の高齢者、災害被害者だが、災害被害者を除き、入居申請者とその配偶者(配偶者が死亡している場合は入居申請者のみ)について「2親等内の親族がいない者」との条件を設けた。

引き受けてもらえないケースも

 県内の事例としては、奈良市内の県営住宅に住む生活保護利用者の女性(59)が、住宅の明け渡しを求める訴えを県に起こされている問題がある(2019年4月20日既報)。女性は離婚後、同居していた夫が出て行った後も住み続けることを希望したものの、名義人が夫から自身に変わるのに伴って求められた連帯保証人を見つけられなかった。女性には2親等に当たる妹がいるが、疎遠になっていて頼れなかった。

 女性の入居承継が生じた時期は2017年で、条例改正以前のため、連帯保証人免除の規定はなかったが、親族を頼れないこの女性のような境遇にある人は免除の規定があっても救済されない。

総務省が行政評価・監視で指摘

 低所得者、高齢者、障害者などの公営住宅への入居を巡っては、総務省が本県など16都道府県と奈良市など53市区を対象に全国調査を実施、2018年1月、「公的住宅の供給等に関する行政評価・監視 結果報告書」を公表し、関係省庁となる国土交通省と厚生労働省に改善を求める勧告を行っている。

 報告書は、「保証人の確保が困難な入居者への対応」を題目にした箇所で、「公営住宅は、国土交通省において、住宅セーフティーネットの中核として位置づけられているものの」「民間賃貸住宅への入居に困難を伴うとされる高齢者や障害者、生活保護受給者等が保証人を確保できないことにより入居辞退した例がみられ、その機能を十分に発揮しているとは言い難い状況にある」と課題を指摘した。

国交省が2度の通知

 保証人を巡っては、国土交通省は過去、次のような通知を都道府県に出している。

 1996年、公営住宅法改正に伴う都道府県知事あての通達で、公営住宅管理標準条例(案)を示した。条例案には保証人免除の規定があるが、通達はその趣旨の説明で「公営住宅が住宅に困窮する低所得者の居住の安定を図ることをその役割としていることに鑑みると、入居者の努力にかかわらず、保証人が見つからない場合は、保証人の免除などの配慮を行うべきである」と解説している。

 さらに、2002年、都道府県公営住宅管理担当部長あての通知では、同条例案の保証人要件について、生活保護の利用者に焦点を当て、「公営住宅への入居が決定した生活保護の被保護者の努力にもかかわらず保証人が見つからない場合等には、公営住宅への入居に際して必ずしも保証人を要しない等とすることができるものであること」と説明している。

 通知の2件とも親族の有無への言及はない。

 全国の自治体には、こうした保証人免除の対象者について、親族がいないことを条件にしていないところもある。

 佐賀市は市営住宅の入居に関し、市のホームページ上で連帯保証人免除に該当する例を挙げ、親族に関しては「親子絶縁状態や数十年来交流のない状態」「親族はいるが生活保護者などで保証能力がない」「亡き配偶者の親族のみで交流がない」などを理由として認めている。

県営住宅担当者「福祉全体で考え、全庁的対応必要」

 県住まいまちづくり課に、連帯保証人の免除に当たって「2親等内の親族がいない者」との条件を設けたことなどについて次の3点、1)親族がいても断られるケースがあるが 2)国交省からの2度の通知の趣旨をくめば、条件は適切でないのでは 3)法人保証を認めることについて検討しているか―を質問した。高木悟課長補佐が答えた。

 1)と2)に対しては、「公営住宅は住宅制度の一環であり、昭和30、40年代の住宅が不足する中で住宅を供給するというものだった。もともと完全な福祉施策ではない。住宅施策の中で出てきた。保証人を求めているのは、そうした事情もある」とした。

 その上で、2親等内との条件を設けた理由について、旧来の家賃は基本的には応能応益の考え方があるとし、「完全に福祉には振り切れない」と述べた。

 一方で、近年の社会状況として高齢の1人暮らしの人が増えているとし、「今後、検討は必要」とした。また、「(収入を得るための)就職にも連帯保証人が必要な場合がある。福祉全体で考える必要がある。就職と住まいに対するセーフティーネットの考え方で、住宅部局だけてなく他部局とも連携して、全庁的に対応していかなければならないと考えている」と述べた。

 さらに、生活保護の利用者については、住宅扶助を受けている自治体からの家賃の代理納付が連帯保証人免除の条件となっているため、親族の有無にこだわらず、「進んだやり方ができるかもしれない」とも述べた。

 3)に対しては、「民間(家賃債務保証会社)は(入居者が払う保証料が)高い。(入居者の)負担にならないものであれば検討の余地はある」とした。長野県では、県と県社会福祉協議会が協定を結び、県営住宅への入居を望んでいるものの、連帯保証人を確保できない人の債務保証を同社会福祉協議会が行う事業がことし1月に始まっている。

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