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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

樹形とどめぬ街路樹の剪定見直し モデル地区から広がらず 大和郡山

モデル地区の外環状線のケヤキ並木。左が軽剪定に改めて樹形が回復した並木、右が従来通りの強剪定を続けている並木。右端は「やまと郡山環境を良くする市民の会」の磯三男会長=2020年3月5日、大和郡山市小泉町

モデル地区の外環状線のケヤキ並木。左が軽剪定に改めて樹形が回復した並木、右が従来通りの強剪定を続けている並木。右端は「やまと郡山環境を良くする市民の会」の磯三男会長=2020年3月5日、大和郡山市小泉町

モデル地区のJR郡山駅前のUR団地前の市道のケヤキ並木。手前が軽剪定に改めて樹形の回復がみられる並木。奥の団地建物前に強剪定を続けている並木が見える=2020年5月1日、大和郡山市高田町付近

モデル地区のJR郡山駅前のUR団地前の市道のケヤキ並木。手前が軽剪定に改めて樹形の回復がみられる並木。奥の団地建物前に強剪定を続けている並木が見える=2020年5月1日、大和郡山市高田町付近

モデル地区のJR郡山駅東口前ロータリーの街路樹。右の樹木は常緑樹のクスノキとみられる=2020年5月1日、大和郡山市高田町

モデル地区のJR郡山駅東口前ロータリーの街路樹。右の樹木は常緑樹のクスノキとみられる=2020年5月1日、大和郡山市高田町

外環状線のケヤキ並木。モデル地区以外では強剪定が続けられている=2020年3月5日、大和郡山市山田町付近

外環状線のケヤキ並木。モデル地区以外では強剪定が続けられている=2020年3月5日、大和郡山市山田町付近

JR郡山駅東側の市道の並木。常緑樹のシラカシとみられるが枝が幹の近くまで刈り込まれている=2020年5月1日、大和郡山市高田町

JR郡山駅東側の市道の並木。常緑樹のシラカシとみられるが枝が幹の近くまで刈り込まれている=2020年5月1日、大和郡山市高田町

城廻り線のケヤキ並木。樹形をほとんどとどめていない=2020年5月1日、大和郡山市北郡山町

城廻り線のケヤキ並木。樹形をほとんどとどめていない=2020年5月1日、大和郡山市北郡山町

 奈良県大和郡山市小泉町の市道外環状線にあるケヤキの街路樹には特徴がある。道路を挟んで、自然な樹形の並木と、枝がばっさりと切られた強剪定(せんてい)の並木が向かい合う。この非対称な光景の理由は落ち葉対策。

 15年ほど前、市は市内の環境ボランティア団体の要望を受けて、同所を剪定の在り方を試験的に見直すモデル地区とした。道路の一方の側の並木についてそれまでの強剪定を軽剪定に改めた結果、樹形が回復。対して、建物があるもう一方の側は落ち葉対策を理由に従来通りの強剪定を続けた。

 市内で目にする街路樹の多くは枝が幹の近くまで刈り込まれ、本来の樹形をとどめていない。景観も悪くしている。市は市が管理する市内全域の街路樹について、樹形を整える程度の軽剪定が基本と説明するが、剪定の見直しはこうしたモデル地区から広がっていない。

 外環状線の同市小泉町から矢田山町に至る約3.4キロの区間には、道路の両側または片側にケヤキの並木がある。沿道には新興住宅地や田畑が広がる。市管理課道路維持係によると、このうち軽剪定を実施しているモデル地区は、住宅に面していない二つの区間で設定され、総延長は約1.6キロ。同係は「軽剪定区間と強剪定区間とに分けて経過観察中」とする。

 落葉樹のケヤキは、枝が上に向かってほうき状に広がる姿が特徴で、青葉も紅葉も美しい。強剪定された木はずんぐりしてケヤキらしい姿が失われてしまっている。

 剪定の見直しを要望したのは「やまと郡山環境を良くする市民の会」(磯三男会長、20人)。磯会長は「街路樹は道路に日陰をつくるのが目的。強剪定は街路樹の機能を考えてない」と指摘する。一方で同会は、外環状線のモデル地区で毎年、秋から冬にかけ、地元の自治会や小学校にも参加を呼び掛けて、落ち葉清掃に取り組んでもいる。

 軽剪定のモデル地区はほかに、JR郡山駅前のUR(都市再生機構)団地前の市道のケヤキ並木の一部と、同駅東口前ロータリーの常緑樹とみられる樹木の街路樹。UR団地前は「市民の会」が要望したときにモデル地区となった。

 一方、強剪定によって自然な樹形が失われてしまっている街路樹は、同じロータリーの東側に面した南北の市道の常緑樹とみられる樹木の並木、同市北郡山町の市道城廻(まわ)り線のケヤキの並木、同市南郡山町の市道のケヤキの並木など。市によると、鳥のふん対策が理由の場合もある。

 市に尋ねた。剪定の見直しが広がらない訳は何かー。市管理課道路維持係は「街路樹の剪定は、近隣の住民の方々の意見もうかがいながら行っている。なぜなら、街路樹に近接して生活を送っておられる方々には、落ち葉清掃への協力で大きな負担も掛けている」とした。住民への配慮を理由として挙げる。

 景観上、悪くても強剪定を行わなければならないのは、当初に街路樹を植えたこと自体がよくなかったのか、または樹種の選定がよくなかったのかー。同係は「街路樹の設置当時は、景観や木陰を作る観点から適切だったと考える」との見解を述べた上で、「街路樹の落ち葉の清掃は住民の方々に委ねていることもあり、住民の高齢化に伴い、落ち葉を少なくしてほしいなどの要望が年々高まった結果だと考える」との見方を示した。

 「やまと郡山環境を良くする市民の会」の磯会長は、市のより積極的な施策を期待する。条例で美しい樹形を定めている市や剪定を数年に一度と決めている市など、全国の事例を挙げ、「街路樹が立派なまちでは、落ち葉感謝デーを設けているところもある。住民が落ち葉を清掃して持っていくと、行政がその落ち葉で作った有機堆肥と交換してくれる。こうした仕組みを作れば良い」と話す。

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