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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

奈良県営住宅、連帯保証人要件「違法と言えない」 離婚元夫から入居承継時、見つけられず 明け渡し求められ控訴 大阪高裁も棄却

 夫婦で入居していた奈良県営住宅の名義を、離婚後、元夫から自身に変更しようとした女性が連帯保証人を見つけられず、入居承継の手続きができないまま、県から住宅明け渡しを求められた訴訟の控訴審判決が大阪高裁であった。一審の奈良地裁で明け渡しを命じられた女性側が判決の取り消しを求めて控訴していた。佐村浩之裁判長は請求を棄却した。判決は5月21日付。

 女性側は「入居承継に当たり考慮されるべき要素は、公営住宅法の趣旨などから、入居期間、所得水準、住宅への困窮で十分であり、連帯保証人を一律に資格要件とすることは違法」などと主張した。

 これに対し判決は、連帯保証人を要件とすることについて「公営住宅は財源が公費であり、堅実な家賃回収を期すべき。廉価な家賃設定で保証人に過酷な負担が生じる恐れが比較的少ないことに加え、わが国では慣行として定着している」などと述べ、「違法とは言えない」とした。

 判決などによると、女性(60)は2015年1月、夫婦で奈良市内の県営住宅に入居、17年6月に離婚し、元夫は退去した。賃貸契約の名義は元夫で、連帯保証人は元夫の親族。女性は名義変更について県に相談した際、連帯保証人を求められたが、唯一の肉親である妹とは断絶状態で、ほかに親しい親族もいなかった。入居承継の手続きができないため、女性が給付を受けていた生活保護の住宅扶助は打ち切られ、家賃の滞納に陥った。

 県は18年6月、元夫との賃貸契約を解除、昨年1月、女性を相手取り、住宅明け渡しを求める訴えを奈良地裁に起こした。同地裁は昨年10月、県の請求を認め、女性に対し、住宅の明け渡しと、県が賃貸契約を解除したときから明け渡しをするまでの期間の賃料相当損害金の支払いを命じた。

 県営住宅条例は、新規の入居者に対しては連帯保証人を求めているが、承継者に対しては18年3月の条例改正で義務化された。女性が名義変更を希望した当時はまだ規定がなく、承継を希望する同居人には運用として連帯保証人を求めていた。

 女性の住宅扶助については、家賃相当額の月額2万700円を奈良地方法務局に供託することで、18年9月から復活している。

 女性の代理人の吉田恒俊弁護士は判決を不服とし、「上告する」としている。

 県営住宅は、住宅に困窮する低所得者に対して低廉な家賃で入居させるため設置される。奈良地裁や大阪高裁の判決の一方で、連帯保証人要件を巡っては、県は対応を変えつつもある。

 県はこの4月から、連帯保証人について、国に登録している家賃債務保証業者の利用を認めている。昨年12月に条例を改正した。これまで連帯保証人を見つけられず入居を断念していた人の入居の機会が拡大する。

 また、18年3月の条例改正では、生活保護の利用者やDV(配偶者からの暴力)被害者、障害者、高齢者などの入居希望者を対象に、連帯保証人を免除できるようにしたものの、「2親等内の親族がいない者」との条件を設けた。条例改正の趣旨が十分に生かされない恐れがあったが、ことし3月の県議会建設委員会で県は、親族がいても連帯保証人を依頼できない場合、個別の事情に応じて丁寧に対応していきたいと表明した。

 さらに全国的な例では、茨城県水戸市が市営住宅について、市市営住宅条例で義務付けていた連帯保証人をこの4月から廃止した。

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