ニュース「奈良の声」のロゴ

地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

最新ニュースをメールで受け取る【無料】

浅野善一

定例会見への参加資格判断、記者クラブに従う慣行 奈良市長再選の仲川氏、見直す考えなし

 7月11日投開票の奈良市長選で現職が再選された(7月12日市選挙管理委員会発表)。市長定例会見への参加や会見での質問は、奈良市政記者会の許可が必要とする現在の運営方法、いわゆる記者クラブ制度の慣行が今後も続く見通しとなった。

 当選した仲川げん氏は、「奈良の声」の立候補者に対する事前の公開質問状に「会見への参加・質問の可否は、クラブ加盟各社および市と協議していただきたい」と回答、会見への参加を希望するメディアが記者クラブと交渉して許可を得る必要があるとする従来の考え方をあらためて示していた。

 「奈良の声」は市長選に当たって、市政を取材するメディアの市長会見への参加資格の在り方と市政記者室の利用の在り方について、立候補者5人に公開質問状を送った。投票日の11日までに全候補から返事があった。(既報

 公開質問状では次のように尋ねた。

 市長の定例会見は名目上、奈良市政記者会(日本新聞協会、民放連加盟の14社の記者で構成)との共催になっている。このため、記者会に所属していないメディアが会見に参加するには、記者会の許可を得なければならない。限定されたメディアでつくる任意組織が、公的な市長会見への参加資格を左右している。

 記者会に所属していない「奈良の声」は、記者会に対し定例会見への参加を申し入れ、昨年12月から参加を認められている。しかし、傍聴のみという条件付きで、自由に質問をすることは許されていない。

 また、市役所の市政記者室は市政記者会にのみ机が割り当てられ、記者会に所属していないメディアは記者室を利用することができない。

 質問(1)市は、市政記者会にのみ市長会見への参加資格を与えるのでなく、記者会に所属していないメディアに対しても、区別なく会見への参加、会見での質問を認めるべきではないか。

 質問(2)市役所の市政記者室は市政記者会しか利用できない。市役所の1室を限られたメディアのみが占有することは、市の公用財産の在り方としてふさわしくない。記者会への所属の有無に関係なく、市政を取材するメディアのための開かれた公的空間とすべきではないか。

 質問(3)これらの問題は市長の姿勢一つで改革が可能。当選後、何らかの改革を行う考えはあるか。

公開質問状に対する仲川げん氏の回答
(全候補の回答は2021年7月11日付既報)
質問 回答
1)記者会見への参加資格 市長定例記者会見は、市の施策を広く市民に広報するとともに報道各社からの取材にお応えするため、新聞社・テレビ局等の報道機関によって構成される「市政記者クラブ」と、奈良市の共催で開催しています。
市政記者クラブは市民に対して市政情報を迅速かつ正確に伝達することを目的に設置されており、中でも新聞・テレビ等のマスメディアは、市民に市政情報を迅速に伝達する手段として有効であり、市民にとっても有効かつ不可欠な広報媒体と考えています。
市長定例記者会見への参加・質問の可否については、市政記者クラブ加盟各社および市と協議していただきたいと考えています。
2)記者室の利用 記者室は、報道機関が奈良市への継続的な取材を通じ、市民の知る権利に応えるため設置されています。また市には市民への情報開示義務と説明責任があり、市に関わる情報を迅速・的確に報道していただくための作業部屋として記者室を設置することは、行政上の責務であると考えます。
一方で現在はマスメディアに限らず、Webメディアをはじめあらゆる方が広報活動・取材活動に取り組むことができる状況です。広く市民に市政情報をお届けするための報道対応および広報手段の在り方について、最適な手段を随時見直し取り組んでいきたいと考えています。
3)改革 市政情報を広く迅速に正確に伝えることは重要であり、2020年10月より毎回の市長定例記者会見の様子はYouTube・SNSで手話付きの動画で公開しています。報道機関をはじめとする各社の取材についても、市民の知る権利に応えるため可能な限り対応してまいります。

 仲川氏は質問(1)への回答で、記者クラブについて「市民に市政情報を迅速に伝達する手段として有効であり、市民にとっても有効かつ不可欠な広報媒体」と位置づけた。その上で「会見への参加・質問の可否は、クラブ加盟各社および市と協議していただきたい」と述べて、記者クラブの判断を重視する考えを示した。

 質問(2)への回答では記者室について、「市に関わる情報を迅速・的確に報道していただくための作業部屋として設置することは、行政上の責務」とした。

 その上で「現在はマスメディアに限らず、Webメディアをはじめあらゆる方が広報活動・取材活動に取り組むことができる状況。報道対応および広報手段の在り方について、最適な手段を随時見直し取り組んでいきたい」と述べた。ただ、具体的な取り組みへの言及はなかった。

 一方、公開質問状に対する他候補の回答には、現在の在り方を見直すと述べたものもあった。

 1人は「記者会見の参加資格に制限を設けるのは透明性の確保や情報公開に逆行する。フリーの記者や通信メディアなども公平に会見に参加でき、情報を発信することが保障されるべき」とした。また、別の1人は「既存の記者クラブへの加盟の有無に関わらず、一定のメディアとして取材の希望があれば参加、質問できるようにしたい」とした。

 会見への参加資格の在り方や記者室の利用の在り方は、市長の姿勢一つで変わる可能性があることを示している。

読者の声

comments powered by Disqus