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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

県裁決、生駒市の処分を取り消し 生活保護申請却下された女性の審査請求で

県の裁決について記者会見する女性の代理人の水丸貴美子弁護士(中央)ら=2021年12月21日、奈良市の奈良弁護士会

県の裁決について記者会見する女性の代理人の水丸貴美子弁護士(中央)ら=2021年12月21日、奈良市の奈良弁護士会

 奈良県生駒市が、生活に困窮した50代の1人暮らしの女性が行った生活保護申請に対し、母から扶養の意思を確認できたとして却下した問題で、女性が県に対し却下処分の取り消しを求めて行っていた審査請求の裁決があり、県は女性の請求を認めて市の却下処分を取り消した。女性の代理人弁護士らが21日、記者会見して明らかにした。

 県は、実際には女性と母の同居がなかったことや市が母の資力を調査していなかった点を「適正と認められない」と断じた。実現性の不確実な扶養を理由に申請を却下した市の判断が問われた格好だ。

 裁決は12月14日付。女性は今年7月13日付で審査請求していた。

 審査請求では、市が女性の申請を親類・縁者等の引き取りを理由に却下したことが適正であったかが争われた。

 裁決書によると、女性は今年4月に保護を申請、市は「母から扶養の申し出があった」として同月中に却下した。市が女性に出した申請却下の通知書には、却下の理由として「親類・縁者等の引き取りによる」と記載されていた。裁決はこれについて、女性が実際に引き取られたことであると解釈できるが、双方の主張や示された証拠から、却下処分の日までに母と同居していたとは認められないとした。

 また、母に扶養能力があるかどうか、市には母の資力について調査すべき義務があったが、市は県の審理員からの質問に「母の資力を確認しておらず、確認するものでもない」と回答していることなどから、母の扶養能力について十分な調査を行ったとはいえないとした。

 女性が感情的な理由で母との同居を拒んでいると市が主張している点についても、女性自身に精神障害者保健福祉手帳2級の障害があることや、母が77歳で要介護2であることを挙げて、通常であれば同居は当然懸念するところとした。

 今回の裁決によって、市は行政不服審査法に基づき、あらためて今年4月の申請に対する処分をしなければならない。

 奈良市の奈良弁護士会で記者会見した代理人の水丸貴美子弁護士らは「おおむね主張が認められた」と裁決を評価した。また、審査請求後に市を相手取り、却下処分の取り消しを求めて起こした訴訟については、市が裁決を受けて保護の開始を決定すれば取り下げを検討するとした。

 市生活支援課は「裁決に対する協議が整っておらず、今の段階ではコメントは控えたい」と話した。 続報へ

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