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発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一

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浅野善一

議員への答弁に干渉 奈良県香芝市議会、公有財産会議質問巡り市に副議長 一方的「間違った考え正して」

香芝市役所=2022年10月、同市本町

香芝市役所=2022年10月、同市本町

 奈良県香芝市議会の今年9月の定例会一般質問で、議長(副議長が務めていた)が市の答弁に干渉する場面があった。同市議会議長が会長を務める市長設置の公有財産有効活用検討会議を巡り、議員が疑問を呈する質問をしたところ、議長(副議長)は一方的に「(議員が)間違った考え方をしている」として、市に「(間違いを)正して答えて」と指示した。答弁の自発性が損なわれれば、議員の質問を妨げることになる。

 川田裕議長が会長を務める同検討会議を巡っては、二元代表制などの観点から議会内や市民の間に疑問を呈する意見がある。今年3月の市議会定例会で賛成多数で可決された、市内小学校の統廃合を目指す「市学校施設の再編等に関する基本方針」は、検討会議が中心となって検討した。

 9月8日の一般質問で中井政友議員(共産)は、同検討会議について「条例にない任意機関が市長の委任を受け、議員と職員が公有財産の活用を方向付けていくことは、地方自治の二元代表制に反するばかりか、守秘義務のない議員が公的機関の検討の前に市役所の検討会議に出て意見し、情報を得ることについては大いに問題がある」などと指摘。

 その上で「執行機関と議決機関の権能の独立の趣旨から考えると、際限なくこれを認めることは適切ではない。行政実例においても『付属機関の構成員に議会の議員を加えることは、違法ではないが適当ではない』との見解が示されている。こうしたことに鑑み全国の中には議員の付属機関への参加を規定している市もある。どのように考えるか」などと尋ねた。

 質問を受けて、議長を務めていた下村佳史副議長は「内容について間違った考え方をしているから、そこを正して答えて」と市に指示した。どの点がどのように間違っているのかについて言及はなかった。

 続いて答弁に立った市企画部長は「『違法ではないが適当ではない』という行政実例があるということだが、前提にあった『際限なく』といったようなところは本市としても十分配慮した中で実施している」と述べた。

 答弁の中に中井議員の質問について間違いを正したような箇所はなかった。企画部長は11月2日の「奈良の声」の取材に対し「(副議長が)どのような趣旨でおっしゃったのかつぶさに覚えていない。質問に対しては(議員から事前に通告を受けていた内容に沿って)予定していた通りに答えた」と述べた。

 下村副議長は、中井議員がまさにこれから市との議論を通じて明らかにしようとしている問題について、議論なしに間違いと断じ、市に対しそれに沿った答弁をするよう指示した。

 副議長の指示は市の自発的な答弁を阻害したのではないか。企画部長は取材に対し「(副議長の指示を)記憶していないので感想は持ち合わせていない」と答えた。

 一方、中井議員は取材に対し「議長(副議長)は(意見を)言う立場にない。言葉を挟むのはおかしい。自分の考えを入れてはいけない」と批判した。

 筆者は一般質問当日、議場で傍聴していたが、下村副議長のこの指示は印象に残らなかった。後日、市議会ホームページで公開されている録画を見て気付いた。

 副議長の指示を確認できるのは音声のみで、この間、議場のカメラは自席での質問を終えた中井議員を捉えていた。音声は近くにいる人物に話しかけるような小さめの声で、録画の音量を上げないと聞き取りにくい。中井議員も記憶に残らなかったという。議場の市関係者の席は議長席のすぐ前にあり、その先に向き合う形で議員席がある。

 中井議員にあらためて録画を確認してもらったところ、音声は副議長のものであると話した。該当部分は、9月8日の中井議員一般質問の録画の29分50秒ごろから始まる。

 「奈良の声」は11月2日、下村副議長に対し議会事務局を通じ文書で次の質問をした。

1)録画にある音声は下村副議長のものでよいか。
2)中井議員の質問に対する市への指示は、市の自発的な答弁を阻害することになるのではないか。
3)指示は議長による議事整理の一環との考えか。
4)市の答弁の自発性が損なわれれば、中井議員の質問を阻害することにもつながるのではないか。

 11月9日を期限として回答を依頼したが、10日時点で回答はなかった。

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