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発行者/奈良市・浅野善一
浅野詠子

私道の市道認定、地域住民に「壁」 補修も一部地元負担 生活道路の安全確保へ、透明ルールが急務

下水道工事の一環として補修された私道

下水道工事の一環として補修された私道。傷みが激しく改善の要望が出ていた=奈良市西部の住宅地内

 通学路や生活道路の安全をめぐり、市道か私道かの違いで、補修の状況などに大きな格差が生じている。市道への認定を求める声は多いが、ハードルが高いのが現実。また傷んだ私道の工事を要望しても地元負担は重く、2、3年は待たされることもざら。透明で公平なルールづくりが急がれそうだ。奈良市で取材した。

 人口約36万8000人の中核市・奈良市。市道は5029路線あり、総延長は1537キロに及ぶ。1998年は4303路線であり、この12年間で新たに726路線が増加した。総延長の増加距離について「即答は困難」と市土木管理課は話すが、少なくとも数十キロは増えていると見られる。

 同課には毎年のように各地の住民から、「私道を市道に認定して」という要望が舞い込む。市道になると、道路の維持補修の費用は市の歳入から賄われるが、私道のままであれば、地域住民らが工費の20%を負担。未舗装の私道の場合は、25%もの負担になる。

下水道補修に関連付け、住民も知恵

 今年3月、市西部のある自治会の総会で、地域の生活道路の修繕に関する報告があった。現場の道路はニュータウンの一角にあり、小学校の通学路として使われ、高齢者の福祉施設も近いが、開発された当時からずっと私道のまま。10年ほど前から復員6メートルの道路の中央付近に大きな穴が開くなど、傷みが目立っていた。大型車両が通行するたびに、近隣住民宅は大きな振動を受けていた。

 そこで昨年7月、自治会役員が市の道路維持課に補修を依頼したところ、「市道に認定されていない」と断られた。しかし壊れた道路をよく観察すると、下水道のマンホールの辺りの破損が著しいことが分かり、同役員は市の下水道課に連絡。何度か折衝を重ねた末、市の調査がようやく行われ、市は同年11月に着工した。基礎を掘り返し、きちんとした補修工事が行われたという。地元の負担金はなかった。住民が知恵を絞った結果だ。

 このようにして市の下水道の予算で私道の補修が図られるケースは、珍しいと見られる。通常は、地元の負担金が発生する。市道路維持課は「私道工事に伴い、地元が負担する金額を知ると、工事の要望を撤回する地域もある」と話す。また、市の財政事情の悪化により、私道の舗装予算自体も抑制されがちで、年間せいぜい500万円程度だという。その上、地元が費用の一部負担を合意しても、補修要望の数が多いため「2、3年待っていただくことはざら」と同課の担当者。

 生活道路として多くの人が利用する私道。これらの道路が市道に認定されるには、かなりハードルが高い。道路法に沿った幅員要件だけでなく、道路構造令に基づくこう配、側溝の整備など、数々の市道認定基準をクリアする必要があるからだ。その上、ニュータウンとして開発された当時から個人名義になっている道路の登記を、市道に改めるための測量、地目変更などの手続きの費用も相当かかる。

 市道延長は地方交付税の算定要件になり、市道と私道の差異は、総務大臣告示の固定資産評価基準に多少は勘案されている。ある自治会役員は「地域の主要な道路が依然として私道であり、市道認定の条件をクリアするための公費助成を何とか考えほしい」と話す。また別の元自治会役員は「過去の市道認定の優先順位に、市議が関与したことがある」とも。

 道路は、通勤・通学だけでなく、地域の祭りの場としても使われることがあり、公共空間の代表的存在。市道認定や私道工事における透明で公平なルールづくりが求められる。

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