2014年5月29日 浅野善一

奈良県市町村事務組合の仕組債損失めぐる住民訴訟 地裁、請求を却下 高リスクの基金運用の是非、判断示されず

 奈良県市町村総合事務組合(管理者、東川裕・御所市長)が基金の運用で、高リスクが指摘されている仕組債を購入し、20億円の損失を出した問題で、記者が取材結果を基に組合を相手取り、当時の管理者らへの損害賠償請求を怠っているのは違法、との確認を求めた住民訴訟の判決言い渡しが29日、奈良地裁であった。

 牧賢二裁判長は、購入した仕組債13銘柄のうち12銘柄について、訴訟の前提となった住民監査請求が請求期限を過ぎて行われ、訴えは不適法として請求を却下、残る1銘柄については損害が生じなかったとして請求を棄却した。地方公共団体がこうした高リスクの基金運用を許されるのかどうかの判断は示されなかった。

 判決などによると、同組合は県内の市町村と一部事務組合が支出する負担金を財源として同市町村職員などの退職手当を支給する一部事務組合。負担金収入の余剰金を積み立て、財源不足に備えるための基金としていた。組合は基金の運用として仕組債を購入していたが、2002〜08年に総額55億100万円で購入した13銘柄を、支給する退職手当の増加に伴う財源不足を補うため、11年3〜12月に34億3510万円で売却した。

 記者は仕組債の売却によって損失が生じたとして、12年12月、同組合監査委員に対し、組合が当時の管理者らに賠償を求めるよう勧告することを求める住民監査請求をした。監査委員は13年2月、請求を棄却。これを受け、記者は同年3月、同地裁に提訴した。

 記者は訴えで、仕組債について、満期が20年から30年で、為替レートなどに連動して金利が決まり、当初は高い利息を受け取ることができる上、レートなどによって満期前に元本額が早期償還されることがあるものの、逆に満期まで償還を受けることができないこともあり、その場合、途中で売却すれば元本額を大幅に割り込む可能性が高い、と指摘。

 売却額が元本を割り、20億6590万円の損失が生じたことに対し、団塊の世代の大量退職など将来の退職手当の財源不足が予想されていたにもかかわらず、組合がこうした投機を組み込んだ危険な仕組債を購入したのは、地方公共団体の基金について確実かつ効率的に運用しなければならないと定めた地方自治法などに違反する、と主張した。

 判決は、仕組債の売却日が財務会計行為の日であるとし、13銘柄のうち12銘柄について、住民監査請求が財務会計行為から1年以内という請求期限を過ぎており、また、記者が仕組債売却の事実や内容を知った12年8月からも4カ月が経過していることに対し、速やかに請求が行われたとはいえないとし、訴えは不適法とした。

 また、残る1銘柄については、売却額と利息を合算すると、購入額を上回っており、損害が生じたとはいえないとし、賠償請求の理由はないとした。

 一方、組合は裁判の中で「仕組債を購入していた間は高金利がもたらされていた。資産運用のプロでもない職員がリーマンショックのような未曽有の経済的事件を予想することなど不可能であった」などとし、「仕組債の購入は地方自治法その他の法令に違反するものではなく、組合による基金運用の裁量の範囲内にとどまる行為であり、何ら違法でないことは明らか」と反論していた。

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