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地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
フリージャーナリスト浅野詠子

奈良県)大和郡山の国立医療観察法病棟 入院日数平均925日、長期化顕著

【視点】心神喪失者等医療観察法に基づき、触法容疑の精神障害者らを強制的に収容し、精神科の治療を行っている大和郡山市小泉町の国立やまと精神医療センターは28日、同法専用病棟(33床)を退院した患者36人の平均在院(入院)日数が925日(約30カ月)であることを明らかにした。法務省・奈良保護観察所が同日開いた医療観察制度運営連絡協議会で同病院の担当者が報告した。同法が施行された2005年当時、厚生労働省は「入院18カ月」のガイドラインを定めたが、なし崩しになってきた。全国30カ所の同法病棟で同様に入院長期化が顕著になっている。

 奈良保護観察所は同協議会で「居住先の確保が難しいケースがあり、対象者の住まいの確保は今後の重要課題」と指摘した。傷害などの事件に及ぶ前、64%の対象者が、被害者である親族と同居しており、家庭には容易に戻れないという。

 見方を変えれば、退院できる症状にあるのに、地域に受け皿が乏しいため、長い収容を余儀なくされている精神障害者が少なからず存在することになる。

 患者の内省が深まらないと、退院の近い人が入る〝釈前房〟(社会復帰期病棟)になかなか移してもらえない。発達障害など、内省することが難しい障害を持つ人も収容されており、在院日数は延びる一方である。政府は「医療の提供が制度の柱である」として、法案もその趣旨に沿って手直しし、同法は成立した。従って、薬物療法に反応しない知的障害、発達障害、認知症などの人々を医療の名の下に収容するのは、法の趣旨に反している。

 この日の会議は、強制入院や強制通院の処遇に携わる精神科病院、自治体関係者らが出席した。提出された資料によると、法施行後、奈良保護観察所管内で対象になった22人のうち、福祉サービスを利用したことのなかった人は16人に上っていた。こうした当事者や家族は、保健所など身近な自治体の機関に相談に訪れた形跡もなかった。府県や市町村は、このデータをどう受けとめているだろうか。

 三郷町勢野北4丁目の指定通院医療機関、ハートランドしぎさんは、医療観察法に基づいて行った10件の精神鑑定について報告した。90歳代のお年寄りや知的障害の人も対象になっていた。また、措置入院や医療保護入院の治療を経て鑑定に移送されてきた人々は、症状が安定していたという。

 回復に向かっているのなら、福祉の処遇が中心になるはずで、わざわざ閉鎖病棟に送らずとも、社会復帰の支援を検討した方が合理的なのではと思う。ところがそうはならず、他の診療科ではあり得ない「再犯の恐れ」によって精神障害者を収容するところに、制度の保安処分的な性格が見えてくる。

 通院する患者を受け入れている県内の精神科病院は4カ所にとどまる。ハートランドしぎさんの報告によると、通院の距離が長く、患者の負担になっているケースがある。院外処方の薬をめぐっては、患者は指定された県内8カ所の薬局でしか受け取れず、不便な状況だという。

 まもなく心神喪失者等医療観察法が施行されて10年。全国で昨年12月末までに対象になった人は3107人。うち地裁の審判で入院命令を言い渡された人は1986人、通院は464人。精神鑑定などの結果、強制治療を免れた人(不処遇決定)は523人。容疑の事実そのものがなかった人は9人。責任能力があり、強制治療の申し立てを却下された人は100人いた。

 海外では、心神喪失イコール不起訴ではなく、すべての人が裁判を受ける権利がある国もあり、そうした国では刑務所で起居する精神障害者は手厚いケアを受けている。日本は、例えば裁判員裁判で、心神耗弱時の犯行に執行猶予つきの温情的な判決が出たとしても、裁判員の知らない収容が待ち受けている。不透明な二重基準だ。【関連する新しい記事へ】

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