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地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

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発行者/奈良市・浅野善一
浅野善一

生活保護扶助費の地方交付税算定額、実際の支出に満たず 奈良市や大和高田市 高い保護率が共通

生活保護扶助費の自治体負担分について、地方交付税の基準財政需要額と、自治体の実際の支出額を比較(「奈良の声」調べ、県と市は普通交付税、十津川村は特別交付税)
自治体 年度 扶助費(うち3/4は国負担)(円) 自治体負担(扶助費の1/4)について 保護率(人口1000人当たりの生活保護利用者数)
基準財政需要額と支出額の差(▲は基準財政需要額が不足)
額(円) 割合(%)
奈良市 2007 98億473万 ▲3億6617万 ▲14.5 16.33
2008 97億5307万 ▲4億2104万 ▲16.3 16.82
2009 105億8913万 ▲1億5655万 ▲6.4 17.1
2010 112億3557万 ▲6億8999万 ▲22.5 18.41
2011 122億1949万 ▲1億5824万 ▲5.3 20.13
2012 124億1865万 2億4792万 8.4 21.43
2013 123億6085万 ▲7240万 ▲2.4 21.98
大和高田市 2007 21億1834万 ▲7498万 ▲14.6 17.15
2008 21億3651万 ▲8698万 ▲16.5 17.61
2009 24億2513万 ▲7631万 ▲13 19.07
2010 25億4916万 ▲9854万 ▲15.8 20.52
2011 25億3161万 ▲1323万 ▲2.2 21.47
2012 26億4742万 ▲7078万 ▲10.7 21.51
2013 25億5114万 580万 0.9 22.23
大和郡山市 2007 17億552万 1347万 3.2 12.2
2008 17億1306万 450万 1 11.72
2009 18億1287万 3636万 8.4 11.77
2010 19億8043万 ▲1886万 ▲3.6 12.86
2011 21億3690万 8635万 19.7 14.08
2012 22億445万 1億5554万 27.8 14.47
2013 21億2713万 1億7892万 40.4 15.05
天理市 2007 10億1971万 4122万 17.6 10.65
2008 9億4763万 3748万 16.3 10.15
2009 9億6652万 1億2310万 76.9 9.89
2010 9億2143万 3324万 14.4 9.87
2011 9億1174万 8745万 44.9 9.86
2012 10億2240万 6987万 28.1 10.2
2013 10億4462万 9971万 42.1 10.61
橿原市 2007 15億9137万 ▲1102万 ▲2.9 7.16
2008 16億4220万 3175万 7.8 7.69
2009 19億6747万 ▲1億7654万 ▲26.7 8.67
2010 24億1291万 5113万 10.6 9.96
2011 22億1341万 1億9782万 48.6 10.77
2012 22億446万 1億330万 21.3 10.59
2013 22億7597万 5871万 11.1 10.62
桜井市 2007 13億2741万 ▲311万 ▲0.9 13.93
2008 12億6187万 ▲1721万 ▲5.1 14.19
2009 13億3794万 1933万 6.1 14.07
2010 13億1951万 1404万 4.1 15.17
2011 14億5200万 3064万 8.8 15.53
2012 15億2639万 3675万 9.8 16.01
2013 16億3777万 3926万 10.1 16.94
五條市 2007 5億669万 2357万 20 8.53
2008 5億5084万 ▲561万 ▲3.6 9.07
2009 5億7152万 5873万 57.4 9.53
2010 6億1253万 796万 5 10.39
2011 6億5894万 4109万 30.8 11.06
2012 6億4907万 1億1265万 163.4 11.84
2013 6億4020万 7502万 63.7 12.44
御所市 2007 11億1853万 ▲1441万 ▲5.6 24.36
2008 11億4831万 ▲916万 ▲3.5 24.93
2009 12億2811万 1491万 5.5 25.67
2010 11億9357万 ▲4563万 ▲15.3 26.12
2011 12億1807万 7647万 31.8 28.3
2012 13億3580万 8167万 30.7 30.17
2013 13億7451万 820万 2.5 30.1
生駒市 2007 7億9903万 5176万 25.9 4.18
2008 9億103万 4586万 20.4 4.47
2009 10億4771万 5133万 19 4.93
2010 12億326万 ▲935万 ▲2.7 5.59
2011 11億8004万 1億4289万 55.2 6.41
2012 13億377万 1億1357万 37.5 6.68
2013 13億4336万 5771万 16.1 6.94
香芝市 2007 3億920万 4730万 63.5 1.98
2008 3億8121万 4836万 51.1 2.42
2009 4億9486万 5908万 51.5 2.94
2010 5億4031万 3028万 21.1 3.69
2011 5億2923万 1億3817万 157.1 4.47
2012 5億5610万 9937万 76.6 4.57
2013 5億3520万 1億1576万 112.4 4.49
葛城市 2007 2億4796万 3120万 69.9 3.57
2008 3億65万 2674万 45.6 3.98
2009 3億1860万 6667万 176.2 4.61
2010 3億8153万 2899万 45.3 4.78
2011 3億3272万 8860万 269.6 5.4
2012 4億2238万 5073万 69 5.55
2013 3億6621万 8839万 217 5.83
宇陀市 2007 5億8483万 1505万 10.1 11.62
2008 6億737万 2344万 17.1 11.57
2009 6億6802万 1677万 9.7 12.16
2010 6億2871万 2943万 17.6 13.06
2011 6億2870万 4791万 35.1 13.5
2012 6億6101万 1880万 9.8 13.71
2013 6億9336万 6648万 46.5 13.85
十津川村 2007 3461万 4227万 828.6 8.44
2008 5568万 3388万 293.3 7.79
2009 5885万 2563万 188 8.3
2010 7188万 3202万 281.9 11.03
2011 1億113万 2984万 115.6 13.87
2012 7049万 4691万 590.7 14.41
2013 7429万 4661万 417.9 12.98
奈良県(十津川村を除く全町村を中和、吉野の両福祉事務所で所管) 2007 42億725万 5002万 4.4 中)7.51
吉)13.01
2008 42億8686万 3064万 2.5 中)7.75
吉)13.4
2009 46億6070万 1億2677万 10.1 中)8.05
吉)13.72
2010 49億9884万 ▲5113万 ▲3.4 中)8.8
吉)14.77
2011 52億4625万 2億730万 14.5 中)9.51
吉)16.47
2012 53億5546万 3億7218万 26.7 中)10.22
吉)17.95
2013 54億3222万 4億3326万 30.6 中)10.75
吉)18.58

【詳細な表へ】

 「奈良の声」は26日までに、奈良県内各自治体の生活保護扶助費の自治体負担分(扶助費の4分の1、残り4分の3は国負担)について、その財源を保障する地方交付税の算定の基礎となる基準財政需要額が、自治体の実際の支出額を満たしているか調べた。それによると、一部の自治体で支出額に満たない傾向があることが分かった。奈良市や大和高田市が顕著だった。これらの自治体には、人口に対する生活保護利用者の割合が高いという点が共通していた。基準財政需要額が実際の支出額を下回れば、自治体からの持ち出しが発生することになり、財政を圧迫する可能性がある。【詳細な表へ】

 県内で生活保護の実施機関になっている自治体は14。市と十津川村はこれら自治体がそれぞれ実施、十津川村を除く町村は県が実施している。

 自治体の歳出における生活保護費はほぼ扶助費と人件費から成る。一方、財源は国庫支出金と各自治体の一般財源。国庫支出金で扶助費の4分の3、一般財源で扶助費の4分の1と人件費を賄う。ただ、自治体負担分の一般財源についても、地方交付税で保障される仕組みになっている。地方交付税は、地方税収入だけでは財源が不足する自治体に、国が必要額を交付する。県と市の生活保護費は普通地方交付税で算定され、十津川村は特別地方交付税で算定される。

 普通地方交付税の額は、自治体の基準財政需要額から基準財政収入額を引いて求められる。基本財政需要額は標準的な財政需要で決まり、生活保護など行政項目ごとに経費を算定し、積み上げていく。基本財政収入額は標準的な地方税収入などで決まる。特別地方交付税の額は地方交付税総額の6%。

 生活保護費の基準財政需要額は、自治体負担分の「扶助費の4分の1+人件費」を保障するもので、「自治体の人口×補正係数×生活保護費の単位費用」で算定される。人口に比べ生活保護利用者が多い場合や、生活保護利用者の数が前年度に比べ伸びている場合は、補正係数によって額が大きく算定される仕組みになっている。

 「奈良の声」は、県と県内12市、十津川村について、「地方財政状況調査に係る歳出内訳及び財源内訳」と地方交付税算定台帳の2007~13年度分、十津川村について「特別交付税の額の算定に用いる基礎数値について(回答)のうち『社会福祉事務所設置町村における生活保護制度に関する調べ』」の同期間分を、県に開示請求し、入手した。

 歳出内訳から、各自治体の扶助費を直近の13年度で見ると、最大は奈良市の123億6085万円、最小は十津川村の7429万円。市で最小は葛城市の3億6621万円だった。

 地方交付税算定台帳に示された生活保護費の基準財政需要額は、扶助費(自治体負担分の4分の1)と人件費の両方を含んでいるため、扶助費に特定した基準財政需要額は独自に算出した。基準財政需要額の基礎となる生活保護費の単位費用について、生活保護費(扶助費)と社会福祉事務所費(人件費)の額の内訳が明らかにされている。生活保護費(扶助費)の比率を算出し、生活保護費の基準財政需要額に掛けた。生活保護費の単位費用は都道府県と市町村で額が異なる。07~13年度は毎年上昇している。

 一方、扶助費の自治体負担分について自治体が実際に支出した額は、扶助費から国庫支出金を引くなどして算出した。

 こうして求めた扶助費の基準財政需要額と実際の支出額を比較した。多くの自治体は、基準財政需要額が支出額を上回る傾向にあることが分かった。超過の度合いは年度で異なるが、率にして数%から数十%、まれだが数百%というのもあった。逆に奈良市と大和高田市はほぼ一貫して下回る傾向にあった。不足の度合いは大体、数%から十数%。このほか、御所市や橿原市などが年度によって下回ることがあった。

 国庫支出金は、当該年度の途中に概算額が多めに交付されるため、翌年度の清算後の実際の額は少なくなることが多い。これにより超過の場合はその度合いが小さくなり、不足の場合は度合いが大きくなる。しかし、国庫支出金を扶助額の4分の3ちょうどに調整して、基準財政需要額と支出額を比較しても、当初の傾向は変わらなかった。

 奈良市や大和高田市は、保護率(人口1000人当たりの生活保護利用者数)が高い点が共通していた。県統計年鑑「生活保護法による保護状況」によると、年度別の保護率は、奈良市が16.33~21.98、大和高田市が17.15~22.23だった。最も高い御所市の24.36~30.17に次ぐものだった。最も低い香芝市は1.98~4.49で、基準財政需要額が支出額を上回る度合いも大きかった。

自治体「物差し、実情に合わない例ある」

 奈良市と大和高田市にどう見るか聞いた。

 奈良市保護第一課の塚本昭課長は「交付税では賄えない。それにはいろんな理由があると思う。扶助費の45%を占める医療扶助も原因としてあるかもしれない。ただ、どれが理由だとは言いにくい。結果としてマイナスということだ」と述べた。

 大和高田市財政課の課長は「基準財政需要額は人口が基礎。扶助費は国の基準通りやっている。大和高田市は保護率が高い。それゆえ扶助費も高くなる。交付税の算定の物差しは平均的市町村の水準で作られている。実情に合わない例もある。保護率の高いところではそれが顕著に現れる」と述べた。

全額国庫負担を 中核市市長会が国に提言

 中核市市長会(会長・仲川元庸奈良市長、45市)は5月25日と6月1日、「国の施策及び予算に関する提言」を関係省庁などに提出した。この中で、生活保護経費の全額国庫負担を求めている。提言は「全国的な被保護世帯の大幅な増加により、各自治体においては、生活保護に要する費用負担が財政を圧迫し、行政運営に支障をきたしている。憲法第25条の理念に基づき、国が国民の最低限度の生活を保障するための制度であり、本来国の責任において実施すべき」などとしている。

 「奈良の声」はことし初め、生活保護の利用者が医療機関を利用したときに支給される通院交通費について、奈良県内自治体の2007~13年度の支給状況を調べた(記事は2015年2月18日付)。その結果、御所市は期間中、支給が一度もなかった▽橿原市も期間当初は支給がなく、その後も低い水準で推移していた▽大和高田市は支給額が10分の1に激減していた―などが分かった。背景に各自治体の財政事情がないか、扶助費について、基準財政需要額と実際の支出額を比較した。

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