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発行者/奈良市・浅野善一
浅野善一

奈良市が生活保護費冬季加算の特別基準の認定、職権で一律に 傷病などによる常時在宅者への上積み

 生活保護費のうち暖房費などを想定した冬季加算。その例外措置として、傷病などによる常時在宅者に対し、加算額を上積みする特別基準の適用をめぐる問題で、奈良市は、要介護度3以上など特別基準の条件に該当すれば、申請によらず職権で一律に認定することを、9日までに決めた。

 同特別基準は本年度から設定された。厚生労働省は「生活保護法による保護の実施要領について」などを一部改正し、昨年5月、都道府県、指定都市、中核市に通知している。近畿の府県庁所在地6都市では、大阪、京都、神戸の3市が条件に該当すれば、職権で認定しているのに対し、奈良市は昨年11月、生活保護世帯から適用の申し入れを受け、初めて対応を検討、県に相談していた。特別基準があることについて、保護世帯の周知もしていなかった。

 通知によると、特別基準では、生活保護世帯で、重度障害者加算の算定者▽要介護度3~5で常時介護を必要とする人▽医師の診断書などにより保護の実施機関が認めた人―など傷病、障害による療養のため外出が著しく困難な常時在宅者、または乳児(0歳児)がいる場合、通常の冬季加算額で困難なときは、同加算額を1.3倍の範囲内で認定して差し支えない、としている。

 奈良市においては、市民団体「奈良生活と健康を守る会」(堀内栄三郎会長)が、特別基準に該当するとみられる2人について、市に対し、適用を申し入れるとともに、職権による一律認定または生活保護世帯への特別基準の周知と申請援助を実施するよう求めていた。

 市によると、県地域福祉課に相談するとともに、厚労省に問い合わせたところ、先月末、同省から「職権で認定してよい」との回答があったという。

 奈良県域の冬季加算の支給期間は11~3月で、支給額は奈良市の場合、本年度は1人世帯なら月額2580円。特別基準の1.3倍が適用されると同3354円で、774円の上積みとなる。

 市で特別基準の対象となる人は、最も多くを占める要介護度3~5の人で100人以上になるとみられている。支給に当たっては、冬季加算支給開始の11月にさかのぼって、2月までの4カ月分の特別基準上積み額を、3月1日の同月分の冬季加算支給時に上乗せするという。生活保護費の遡及(そきゅう)支給は2カ月程度までが限度とされるているが、市は昨年12月に特別基準の認定について調査を開始していることから、11月までさかのぼることが可能という。

 塚本昭・市保護第一課長は、特別基準の適用について「当初は、通常の冬季加算額で足りないと相談があった際に検討すればよいと考えていた。特別基準に該当する生活保護世帯に対しては、市のケースワーカーが訪問時に説明する」と話している。

県中和、吉野福祉事務所も職権で一律認定

 奈良市以外の県内市町村で、特別基準の適用をめぐる状況はどうか。県地域福祉課によると、十津川村を除く町村部について生活保護の実施機関となっている県が設置する、中和、吉野の2福祉事務所も、職権で一律に認定することを先月決めた。同月中に、12月以降の特別基準による上積み額を支給。併せて全保護世帯に対し、文書で制度の周知を図ったという。11月分の取り扱いについては、厚労省に相談中という。

 中核市の奈良市を除く11市と十津川村への、厚労省の昨年5月の実施要領改正の通知は、県を通じて同月に行われた。同課によると、先月に再度、これらの市、村に対し、特別基準の制度について生活保護世帯への周知を図るよう、また、個々の世帯の状況に応じて所要の措置を講じるよう通知したという。

 生活保護法の下では、全国どこに住んでいても生活保護利用者の権利は等しく保障されなければならないが、職権による一律認定を行わない一方で、特別基準が設定されたことを周知せず、相談を受けてから検討する方式だと、こうした権利が損なわれる恐れがある。【続報へ】

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