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地域の身近な問題を掘り下げて取材しています

発行者/奈良県大和郡山市・浅野善一
浅野善一

県内の生活保護冬季加算の特別基準認定、職権で一律は奈良市と県実施の町村のみ 6市は制度周知なし

県内自治体の生活保護冬季加算特別基準への本年度の対応
(「奈良の声」の電話取材などに対する2016年2月16日までの回答)
自治体 特別基準への対応 保護世帯への周知
奈良市 職権で一律認定 該当の可能性あるが、職権で一律認定できなかった世帯には文書で通知
大和高田市 個別に検討 該当の可能性ある世帯に口頭で説明
大和郡山市 個別に検討 該当の可能性ある世帯に口頭で説明
天理市 個別に検討 該当の可能性ある世帯に口頭で説明
橿原市 個別に検討 全世帯に文書で通知
桜井市 相談あれば対応が必要との認識はある 必要性の認識あるができていない
五條市 必要かどうかケースワーカーが個別に把握できている していない
御所市 相談あれば検討 必要性の認識あるができていない
生駒市 解決策の一つとして提案する可能性はある していない
香芝市 個別に検討 文書による通知を準備中。全世帯か該当の可能性ある世帯かは検討中。
葛城市 ケースワーカーが個別に世帯の状況を把握できている していない
宇陀市 通常の加算額で対応 必要性の認識あるができていない
十津川村 個別に検討 該当の可能性ある世帯に口頭で説明
36町村(県中和または吉野福祉事務所) 職権で一律認定 全世帯に文書で通知

 生活保護費の暖房費などを想定した冬季加算で、傷病などによる常時在宅者が居る世帯に対し、加算額を上積みする特別基準の適用をめぐる問題で、奈良県内でも自治体によって対応はさまざまであることが、「奈良の声」の取材で分かった。

個別に検討が大半

 要介護度3以上など同特別基準の条件に該当すれば、職権で一律に認定しているのは、奈良市のほか、36町村の生活保護の実施機関となっている県のみ。このほかの12市村はいずれも、相談などに応じて個別に検討する形。

 冬季加算の特別基準は、厚生労働省が昨年5月、「生活保護法による保護の実施要領」を改正し、この冬から設定された。個別に検討している自治体の中には、制度について保護世帯に伝えていないところもある。この場合、上積みを必要とする世帯が制度を利用できない恐れもある。

 特別基準では、生活保護世帯で、傷病、障害などによる療養のため外出が著しく困難な人―具体的には、重度障害者加算の算定者▽要介護度3~5で常時介護を必要とする人▽その他医師の診断書などにより保護の実施機関が認めた人、または乳児(0歳児)が居る場合、冬季加算を1.3倍の額で認定して差し支えない、としている。

 県内で、福祉事務所を設置して保護を実施しているのは、12市と十津川村、県(中和、吉野の2福祉事務所)。

 2月16にまでに、それぞれの保護課や社会福祉課などに電話取材などで確認したところ、職権で認定していたのは奈良市と県のみ。奈良市保護課によると、15日現在、条件に該当した人は362人。内訳は要介護が213人、重度障害者が113人、乳児が34人などという。県は制度について、全世帯に文書で周知もした。奈良市は、認定した世帯に対して、ケースワーカー(職員)が訪問時に説明するほか、遺漏がないよう、該当する可能性がある世帯には文書で通知するという。

 このほかの12市村はいずれも、保護世帯からの相談やケースワーカーが把握している状況に応じて個別に検討する形。制度の周知については、全世帯に文書で通知していたのは橿原市のみ。大和高田、大和郡山、天理の3市と十津川村は、該当する可能性がある世帯に対し、ケースワーカーが訪問時などに口頭で説明。

 桜井、五條、御所、生駒、葛城、宇陀の6市は周知をしていなかった。桜井、御所、生駒、宇陀の各市の担当課は「必要性は認識している」などとし、文書による通知を予定または検討しているとした。一方、五條市、葛城市の担当課は「特別基準の認定が必要かどうかケースワーカーが把握できている」と説明した。

 12市村のうち11市村が、2月12~16日の取材時点で、特別基準認定の該当者はいないと明言した。

対応に遅れも

 特別基準の周知や認定をめぐっては、対応の遅れも見られた。

 厚労省からの実施要領改正の通知は昨年5月。奈良県域の冬季加算の支給期間は11~3月。奈良市は昨年11月、保護世帯から適用の申し入れを受け、初めて対応を検討、県に相談した。制度の周知もしていなかった。12月に特別基準の該当者の調査を始め、職権による一律認定に踏み切った。このため、11月から2月までの4カ月分の特別基準上積み額は、3月1日の同月分の冬季加算支給時に上乗せする。

 県の場合も、職権で一律に認定することを決め、同時に文書で制度を周知したのはことし1月。このため、生活保護費の遡及(そきゅう)支給の限度とされている2カ月を超える11月分の上積み額の支給については、厚労省に相談中という。

 また、県地域福祉課は1月、福祉事務所を設置する県内市村に対し、制度について保護世帯への周知を図るよう、また、特別基準に基づき個々の世帯の状況に応じて所要の措置を講じるよう通知。

 これを受け、橿原市が文書で制度を周知したのはこの2月だった。一方、2月16日現在、香芝市は文書による通知を準備中。通知先を全世帯とするか該当する可能性がある世帯とするかは検討中という。大和郡山市の保護世帯への制度の説明も進行中という。

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