食育に地元野菜を 曽爾御杖事務組合学校給食センターが契約農家を募集 高齢化する生産者の励みにも
学校給食に野菜を提供する井上雅夫さん(右)夫婦。「おいしいと喜んでもらえることが励みになる」と学校給食センターの取り組みを歓迎している=2017年3月22日、御杖村菅野
奈良県曽爾・御杖2村でつくる曽爾御杖行政一部事務組合(管理者・伊藤収宜御杖村長)の学校給食センターは、小中学校の給食に地元野菜を取り入れようと、野菜を提供してくれる契約農家を募集した。生産者との交流などを通じて食育につなげようという取り組み。併せて、高齢化している生産者の励みにもなればと期待を込める。
2村共同の学校給食センターによる給食調理は1973年に始まった。現在、2村それぞれに村立の小学校1校、中学校1校があり、合わせて94人の児童・生徒が通う。御杖村菅野にある同組合教育委員会東宇陀学校給食センターは、これらの小中学校と2村の保育所の給食を調理している。
組合事務局によると、使用する食材のうち、野菜は地元曽爾村の商店1業者から仕入れている。納入される野菜は、大和郡山市の県中央卸売市場で仕入れたものだという。週5日のうち4日はご飯給食で、米については2015年10月から、2年契約で地元農家のものを買っている。
契約農家の募集は、ことし2月28日を申し込み期限として米と野菜について実施した。米は、8軒から応募があった。ことし10月から2年を契約期間とし、必要とする量をそれぞれから均等に購入するという。野菜は、タマネギやジャガイモ、ニンジンなど17品目を挙げて募り、5軒から応募があった。必要とする量の2~3割を確保できそうだという。購入は来月1日から。
献立表の作成や食材の発注、食育の授業など給食全般を担当する同センター学校給食栄養管理者の今澤裕子栄養教諭は、購入を通じて農家との親交が深まってきたら「農家と学校をつなげたい」と考えている。
子どもたちが収穫する機会をつくってもらったり、農家の人たちに学校の授業で話をしてもらったり、提供してもらった野菜を使った給食を一緒に食べたりできれば、食生活が自然の恵みや勤労に支えられていることを知るきっかけになり、「一番の食育になる」と期待する。
同組合の坂井和男事務局長によると、2村の農家はほとんどが兼業で、生産の規模も小さく、栽培した野菜は自分たちで消費するほか、地元の直売所に出荷するなどしている。担い手は高齢化しているという。
野菜の提供で応募した農家の一人、御杖村菅野の井上雅夫さん(82)は「食べた人においしいと喜んでもらえることが励みになる」と同センターの取り組みを歓迎する。井上さんのこだわりは「無農薬に近い野菜作り」。「ハクサイなど、化学肥料ではなく、有機肥料で育てると甘みも多い」という。近所の人の孫が都市部に住んでいて、普段は野菜嫌いなのに、井上さんの作った野菜だとおいしいと言って食べてくれることがうれしい。
地元野菜を学校給食に取り入れる取り組みは、県内の他の自治体でも始まっている。