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浅野善一

万博ボランティア応募者、多数の不採用一転して採用に 奈良県が出展で募集 選考に不備判明し

奈良県庁の玄関ホールで大阪・関西万博への出展をPRする県のポスター=2025年3月24日、奈良市登大路町、浅野善一撮影

奈良県庁の玄関ホールで大阪・関西万博への出展をPRする県のポスター=2025年3月24日、奈良市登大路町、浅野善一撮影

 奈良県が4月13日開幕の大阪・関西万博に出展するに当たって募集したボランティアの選考で、多数の応募者がいったん不採用とされた後、一転して採用になっていたことが分かった。県が不採用だった人からの問い合わせを受けて、あらためて選考結果を確認したところ、複数の応募者が要件を満たしているにもかかわらず、不採用になっていたことが判明したという。

 県の出展があるのは4月、5月、9月で、県を代表する伝統行事・芸能を披露するほか、奈良の食を味わうブースの開設や県内市町村をPRする展示・動画の上映などを行う。

 ボランティアが従事するのは来場者の誘導・案内や美化活動、会場の準備などで、活動期間は計33日間。応募資格は18歳以上であること。応募の記入欄では活動希望日のほかに、「歓迎要件」として外国語会話やイベントなどでの実務経験を尋ねた。延べ人数で450人を募集した。県ホームページで募集を告知したほか、報道発表もした。

 県万博推進室によると、2月7~28日の募集期間中、半ばの段階では15人ほどの応募しかなかった。これが新聞などのニュースになると、応募者が急増、最終的に約310人の応募があった。募集人数の範囲内だったが、約80人が不採用になった。選考は、出展の計画から運営までを委託している大手広告代理店のJV(共同企業体)が行った。推進室はこの委託業者から提出された選考結果のリストを基に、3月17日ごろ、応募者にメールで結果を通知した。

 県に問い合わせをしたのは奈良市のイベントプロダクション経営男性(67)で、「奈良の声」にも情報を寄せた。男性によると、応募では期間中いずれの日でもほぼ活動が可能ことや実務経験があること、飲食店で使う接客英語が話せることを伝えた。しかし、結果は不採用。納得がいかなかったという。

 一方、推進室は男性からの問い合わせを受けて、選考結果をあらためて確認した。応募者の活動希望日などと実際の採用状況を照らし合わせたところ、採用された人と同じように要件を満たしていても不採用だった人が複数いることが分かったという。推進室は「できる限り多くの人に県の出展に関わってもらう」というボランティア募集の狙いに沿って、委託業者に人員の配置や選考を見直すよう指示していた。

 不採用だった約80人のうち、あらためて採用することにしたのは76人。3月24日にメールで通知した。応募者のほぼ全員が参加できるようになった。ボランティア全体の1人当たりの活動日はほぼ1日になるという。

 推進室長補佐は「最終的に想定以上の応募があり、委託業者も人の割り付けが難しかったのかもしれない」と釈明、県の責任についても「業者から提出された選考結果のリストをうのみにしていた」と述べ、選考に不備があったことを認めた。

 男性は「奈良の声」の取材に対し「応募が15人しかないとのマスコミ報道から、多くの皆さんが奈良をアピールするのに一大事と受け止めて応募した。選考を委託業者に任せきりにし、万博推進室が確認していなかったのは問題。応募者のほぼ全員が採用されたのは良かった。ボランティアのほかの皆さんと一緒に奈良を盛り上げたい」と述べた。

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