奈良県)王寺町自治連合会長の選出、総会承認前に町広報紙が「決定」の記事 各世帯に配布
「決まりました」との見出しで総会での承認前に自治連合会長の氏名を掲載した王寺町広報紙「王伸」2018年3月号(当該のページ〈部分〉と表紙〈右下〉、画像の一部ぼかしは「奈良の声」による)
会長選出、規約改定などを審議した王寺町自治連合会総会=2018年3月4日、王寺町王寺2丁目の町やわらぎ会館
奈良県王寺町発行の町広報紙「王伸(おうしん)」3月号が、2018年町自治連合会長の選出について、同連合会総会で承認される前に、会長が決定したとする記事を載せ、各世帯に配布されていたことが分かった。総会は今月4日、同町王寺2丁目の町やわらぎ会館で開かれたが、広報紙の配布は2日から行われていた。自治連合会長選出は広報紙が伝える通りになったものの、総会の形骸化につながりかねず、疑問の声が出ている。
同月号の13ページは、王寺町内53自治会の2018年会長とこれら自治会で組織する町自治連合会の同年会長が決定したとして、その氏名を掲載した。町政策推進課の担当者によると、自治連合会長は昨年12月の自治連合会役員会で内定していたことから、4日の総会で決まることを見越して掲載したという。担当者は「1カ月先の4月号に載せるのではお知らせとしては遅いのではないかと思った。自治連合会長は総会の承認を経て決まることを書いておくべきだった」と話した。
加えて、2018年自治連合会長は、町自治連合会規約の会長選出の規定を変更して選出されるに至ったが、その規約変更もこの総会で初めて承認された。自治連合会役員会は昨年12月、規約の改定を協議し、役員会が必要と認めたときには、自治会長以外の者も自治連合会長に就任できるように規約を改めることを決めた。2018年自治連合会長には現役の自治会長ではなく、退任した2017年自治会長が就任した。
また広報紙の記事は、会長が退任した16自治会の2017年会長名を掲載したが、自治会長を退任したものの、2018年自治連合会長に就任した自治会の会長名はなかった。退任者が自治連合会長に就任することになったための配慮とみられる。退任自治会長の氏名一覧が不正確になったことについて、町政策推進課の担当者は「一言、説明を加えるべきだった」と釈明している。
町自治連合会に所属する自治会の副会長は「総会の前に自治連合会長決定の広報紙を見て違和感をもった。自治会の代表でない者が自治連合会長の候補になれる規約改定にも疑問があり、今後、地域のボスのような人が就任する心配はないのだろうか。自治権を放棄することにならないか案じる。町政側がてっとり早く『民意』を聞くような存在にとどまってはならないと思う」と話している。
王寺町の一般会計から町自治連合会に対し支出する運営補助金は年間396万円(2017年度当初予算)。
県内最大の奈良市自治連合会は1125の自治会で組織し、会長は50地区地区自治連合会の会長の中から選ぶ。市の担当者によると、地区連合会長の中には地元自治会の会長でない人も数人含まれる。一方、同市の自治連合会長(任期1年)は3年を越えて継続できない規定がある。王寺町自治連合会の今回の規約改定では、多選を制限する改定はなかった。