奈良県宇陀市、毛皮革くず焼却施設の指定管理者が業務日報を未提出 加工業者でつくる組合
奈良県宇陀市役所=2025年1月、同市榛原下井足、浅野善一撮影
奈良県宇陀市内の毛皮革産業の業者から排出される毛皮革くずを焼却処分する市毛皮革屑(くず)処理施設の管理運営を、指定管理者として市から委託されている毛屑・ニベ処理組合が、市への提出が義務付けられている事業報告書のうち、施設の利用状況を示す業務日報を提出していなかったことが、「奈良の声」が市に開示請求した文書で分かった。市職員が報告書の作成を手伝っていたことも分かった。
「奈良の声」の指摘で、2021年度以降の業務日報が追加で提出されたほか、今後は協定書通りに日報が提出されることになった。組合の事務である報告書の作成も自ら行ってもらうという。
処理施設は同市菟田野古市場の毛皮革工場団地にあり、毛皮革くずを排出する団地の加工業者を構成員とする同処理組合の組合員が利用している。組合員は持ち込み量に応じて使用料を払っている。焼却灰の処分は組合が最終処分業者に委託している。市から組合への委託は随意契約。
「奈良の声」が開示請求したのは、処理施設の管理運営について2022、23年度それぞれの、指定管理者の選定に関する文書▽市が委託に当たって組合と締結した協定書▽組合が市に提出した事業報告書。
今年2月、請求内容に沿った文書が開示されたが、協定書で提出が義務付けられている事業報告書のうち、持ち込み業者名や持ち込み量など「施設の利用状況」を示す業務日報が、いずれの年度についても、ないことに気付いた。経費の収支清算書や次年度の予算書、事業計画書などはあった。
担当の市商工産業課に確認すると、組合から提出された事業報告書の中に業務日報そのものがなかったことが分かった。担当者は提出の必要性について「(協定書の規定を)見落としていた。組合に提出を求める」と述べた。
一方、毛屑・ニベ処理組合の組合長は業務日報が未提出だったことについて「奈良の声」に対し、施設の事務的なことについては「市役所の人にお願いしている」と述べた。毛皮革くずを持ち込んだ組合員への請求書の発行もしてもらっているという。組合長の話では、長年こうしたやり方でやっていた。焼却などの処理作業は組合が雇用している従業員が行っている。
「奈良の声」は業務日報が市に提出されるのを待って、あらためて開示請求した。4月28日、2022、23年度それぞれの業務日報合わせて72ページが開示された。日々の持ち込み業者名や持ち込み量、焼却炉の運転日が記載されていた。記録そのものはあった。
施設の管理運営を委託し、事業報告書を点検する立場にある市の職員が、委託先の組合の報告書の作成を手伝う中で、業務日報の未提出があった。
市商工産業課長は取材に対し「市が組合の入出金業務をしていたわけではない」とした上で、「経理や事業報告書作成は組合がするのが大前提だが、市の委託料に組合が事務員を置くだけの額があるわけではなく、市の負担が増えるのも良くない」と説明、組合長の依頼を受けた担当の市職員が「お手伝いをしていた」と述べた。しかし、こうした在り方については「(組合との間で)分けるべきところはきれいに分けないといけない。今後は組合で実施するよう組合に協議してもらっている」と述べた。
2022、23年度それぞれの委託料はいずれも900万円で、うち半分の450万円は県の産業廃棄物処理事業補助金。2025年度予算でも同額の委託料が計上されている。施設での2023年度の毛皮革くずの処理量は402トン。日報には8業者の名前があったが、稼働している業者は減っていて、実際に持ち込んでいたのは3業者だった。
開示された組合との協定締結に関する起案書などによると、同施設は1993年に利用が開始された(当時は合併前で菟田野町の施設)。以来、同組合に管理運営が委託されてきた。市は必要な議会議決を経て2021年3月、2021年度から5年間を指定期間として、引き続き管理運営を委託している。
筆者情報
- 浅野善一
- 電話 090-7767-8403
- メール asano-zenichi@voiceofnara.jp
- ツイッター @asano_zenichi