奈良市高畑町のヴォーリズ建築「栗盛吉蔵旧居」 保存運動受け専門家ら見学
ヴォーリズ建築の主、栗盛の画室だったとみられる1階の部屋=2025年6月19日、奈良市高畑町、浅野詠子撮影
奈良県内に現存する唯一のヴォーリズ建築とされ、日本画家・栗盛吉蔵(1897~1974年)の旧居として保存を求める声が上がっている奈良市高畑町の屋敷が6月19日、所有者の大和ハウス工業の協力で専門家らに公開された。
「高畑・旧栗盛吉蔵邸の保存・活用を進める会」(大槻旭彦代表)が来月6日、奈良市内で開くフォーラムで室内の様子を紹介するため、同社に映像の撮影許可を求めていた。フォーラムの共催団体である県建築士会のメンバーらもこの機会に合わせて室内を見学できるよう希望していた。
見学にはヴォーリズ研究者や建築士ら約30人が参加した。室内は一部で壁が剥落しかけ、荒れていた。その一方で、居間の暖炉などにモダンなセンスが発揮されていた。
ヴォーリズ建築に詳しく、フォーラムで基調講演が予定されている関西学院大学国内客員教授の山形政昭さんも訪れた。山形さんは、「栗盛旧居」の計画段階の図面を入手している。栗盛の画室だったとみられる1階の部屋や居間などについて「天井すれすれまでのガラス窓は特徴がある」と感想。2階に円窓や床の間をしつらえた和室があり、「栗盛はこの部屋で自作の日本画を置いて眺めたかもしれない」と話した。
山形さんによると1階玄関の真鍮(しんちゅう)製と見られるドアノブは「OSC」の印があることから、ヴォーリズゆかりの滋賀県の近江兄弟社が製作した可能性が高いという。また、屋敷が重厚な土塀で囲まれていることに山形さんは感心していた。
この日は、フォーラムの共催団体、奈良まちづくりセンター理事長の藤野正文さんや市文化財課の職員も訪れた。
屋敷は木造瓦ぶきの2階建てで外壁はモルタル。床面積は1階が107平方メートル、2階が97平方メートル。敷地は483平方メートル。1930年代の建築とみられる。栗盛は1944年、郷里の秋田県大館市に帰った。その後、新しい持ち主が住んでいたが、20年以上空き家状態になっていた。今年3月、大和ハウス工業が土地と建物を取得し、解体して土地の売却を予定していたが、大槻さんや大学名誉教授らが保存を訴え、同社との話し合いが始まっている。
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- ジャーナリスト浅野詠子
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